税制改正大綱6回目は資産課税(相続税・贈与税)の続きで教育資金贈与等の見直しや配偶者居住権等の評価について見ていきます。
(1)教育資金贈与の見直し
<概要>
教育資金贈与は直系尊属(父母・祖父母等)から教育資金の一括贈与を受けた場合に1500万円まで非課税とする制度です。
相続時に加算しなくていいことや用途が広いことなどからヒットしましたが、適用期限が2019年3月に迫っていたので、対象を絞った上で2年延長されました。
改正点
(ア)もらう側の前年の合計所得金額が1000万円超なら対象外。
(イ)23歳以後に支払われるスポーツや文化芸術に関する習い事のための費用を除外。
(ウ)相続以前3年以内の信託で受贈者が23歳以上や在学中でない場合には、相続時の残額を相続財産に加算。
(エ)30歳になっても在学中あるいは教育訓練を受けている場合は40歳まで延長。
<適用時期>
(ア)(ウ)は平成31年4月1日以後、(イ)(エ)は平成31年7月1日以後適用。
(ア)(イ)(ウ)は対象者を制度本来の趣旨に当てはまる人に絞り込むための措置(増税)で、(エ)は年齢制限を緩和する措置(減税)となっています。
なお(ア)の要件は「結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置」に関しても追加されます。
(2)配偶者居住権等の評価
<概要>
配偶者居住権とは民法改正により配偶者の老後の生活を守るために設けられた権利で、所有権と分離することで一生住み続ける権利を保障するものです。
(ア)配偶者居住権
建物時価-建物時価✕(残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数✕存続年数に応じた法定利率による複利現価率
(イ)アの建物
建物の時価-(ア)
(ウ)アの敷地利用権
土地時価-土地時価✕存続年数に応じた法定利率による複利現価率
(エ)ウの底地
土地時価-(ウ)
一生使える権利なので、存続年数を理論上導き出して権利部分を分離します。この場合の存続年数は配偶者の平均余命を原則とし、耐用年数に関しては住宅用の1.5倍になります。
詳細はまだ出ていませんが、土地や建物の”時価”は現行と同じ相続税評価額となると考えられます。
<適用時期>
平成34年4月1日以後の相続等
教育資金贈与に関しては少子化対策と景気対策も狙いとしてあったので今までが緩かったですが、改正で本来必要な方に対象を絞ったと言えます。
配偶者居住権については数学的で複雑な評価となりましたが、できるだけ評価額を少なくするための措置と考えられるので詳細が出たら実際に計算して解説します。