先週の続きで定期借地権付き住宅の税金について確認します。
1.相続税
定期借地権の相続税評価はかなり複雑ですので、一般定期借地権に絞って解説します。
定期ではない普通借地権の割合は通常60~70%あるので底地の評価はかなり下がります。これは一度貸したらなかなか返ってこないという事情が考慮されています。
これに対して定期借地権は必ず返ってくるため、貸すことによる地主の節税効果は一般の借地権より小さくなります。
① 地主
・底地評価=相続時の自用地評価額-「一般定期借地権に相当する金額」※
※一般定期借地権に相当する金額
自用地評価額 ×(1-底地割合)× A/B
底地割合…55~75% 路線価図のD地域なら60%
A…残存期間年数の基準年利率による複利年金現価率
B…当初設定年数の基準年利率による複利年金現価率
底地が60%なら借地権は単純に40%になるはずですが、定期借地権は返還時期が近づくと値打ちが下がっていくため、その期間分を金利も考慮して割り戻しているのが「A/B」の部分です。
② 借り手
普通に考えると、全体から地主分を引いたものが借り手の借地権になりそうなものですがそうはなっていません。
・定期借地権の評価=自用地評価額 × [(A/B)×(C/D)]
A:定期借地権の設定時における借地権者に帰属する経済的利益※の総額
B:定期借地権の設定時における土地の通常取引価額※
C:残存期間年数の基準年利率による複利年金現価率
D:当初設定年数の基準年利率による複利年金現価率
※経済的利益…権利金や保証金の運用益
※通常の取引価額…時価。簡易的に自用地評価額÷80%で計算することも可能
2.所得税
① 地主
・返還不要の権利金…契約時の売上(時価の50%超なら譲渡所得)
・毎月地代…毎年の売上
・前払地代…契約時に先々の地代をもらっている場合は、期間に応じて按分して毎年の売上に含めます。地主としては売却と同程度の前払地代を受け取って運用に活用できるメリットがあります。
② 借り手
・居住用であれば特に処理はありませんが、社宅にしている場合などには毎月地代と前払地代のうちのその年分を経費処理します。
定期借地権の評価はかなり難解ですが、期間が長いだけに評価額の変動も大きくなります。
長期的にどのような影響があるか、税理士に相談してしっかりシミュレーションしておきましょう。