スマート税務行政の最終回は「課税・徴収の効率化・高度化(インテリジェント)」です。
2.課税・徴収の効率化・高度化(インテリジェント)
(1) 申告内容の自動チェック
<将来像>
・マイナンバーをキーに申告内容と資料データを自動チェック。
・疑問点はマイナポータル等を通じて自動的に照会。
・AIで情報を自動収集し、相続税や贈与税の財産評価も自動的に計算。
<現状>
・資料データをシステムで分析して調査の必要性を判定。
・疑問点は担当者が1件ずつ電話するので時間と手間がかかる。
(2) 軽微な誤りのオフサイト処理
<将来像>
・軽微な誤りは納税者への自動連絡して是正依頼。「オフサイト」は現場から離れたシステムが行なう、という意味。
・是正依頼に反応がない場合や滞納税金についてはオペレータが電話依頼。AIで応答事績を自動作成し、効率アップ。
<現状>
・誤りについては電話で照会し、是正指導。源泉所得税はまずハガキを送る。手間も時間もかかる。
・滞納税金については納税コールセンターが集中的に対応。
(3) 調査・徴収でのAI活用
<将来像>
・過去の情報、資料データ、統計分析から大口・悪質な事例を選定し、システム上に提示。
・滞納税金についてもビックデータやAIの活用により個々の納付能力を判定し、最適な接触方法をシステム上に提示。
・滞納情報と国内外の資産情報を自動的にマッチングさせ、差押えを迅速化。
<現状>
・調査の選定や実施には経験が重要で個人差も大きい。結論が人によって違うことも。
・滞納税金に関しては財産状況の把握が難しい。
・アメリカでは滞納税金への対応方法がシステムで自動的に提示され、人の割り振りもシステムが行なう。
・イギリスやオーストラリアでは税収の大きい納税者には専門チームが対応し、効率を上げている。
共通しているのは自動化と効率アップ。
通常の事例なら税務署員は画面の指示に従って動くだけでいいことになります。
税務署員も税理士も調査に関しては大幅に仕事が減ることになりそうです。
人による差がなくなって公平な対応になるのは歓迎ですが、システムの裏をかく脱税にどう対抗していくかが開発する上で重要になってきます。
3回にわたって見てきたスマート税務行政。
やはりマイナンバーは税金の徴収のためだったんだなと改めて感じますが、AIの活用で納税者の利便性が向上する面にも期待したいと思います。