昨日の副業に関する記事の中で「株の譲渡損失を繰り越す場合は確定申告した方が得」と書きましたが必ずしもそうとは限りません。
特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、譲渡益や配当があっても既に源泉徴収されていることから確定申告の必要はありません。
ただし、複数の特定口座の利益と損失を通算するため、あるいは過去の譲渡損失と相殺するために確定申告をする場合があります。
上場株式等の譲渡損失は確定申告することにより翌年以後3年間繰り越すことができ、翌年以後の株の譲渡益や配当と相殺して源泉徴収された税金の還付を受けることができます。
しかし、所得税等が還付されるメリットがあるだけではなく、以下の影響が出る場合もあるので注意が必要です。
① 国保・後期高齢者医療保険料・介護保険料の増加
国民健康保険・後期高齢者医療保険の保険料は、総所得金額等(前年以前の譲渡損繰越控除の適用後)に保険料率を乗じて計算します。
そのため株の譲渡益や配当を確定申告に含めた場合は保険料の負担が増加します。
また介護保険料についても合計所得金額(譲渡損の繰越控除適用前)で決定されるので負担が増加します。
その他、高齢者の医療費の自己負担や介護保険の利用者負担を判定する所得にも確定申告をした株式譲渡益等が含まれ、負担割合が増加する可能性があります。
なお社会保険に加入しているサラリーマンの場合は影響はありません。
② 配偶者控除・扶養控除の適用除外
配偶者や被扶養者が株式譲渡益等を確定申告に含めることにより合計所得金額が38万円を超えた場合、扶養控除等の適用除外となり扶養者の所得税・住民税が上がる場合があります。
③ 国民年金・国民健康保険の支払い
配偶者等に恒常的な収入が130万円以上あるとみなされると国民年金の支払や国民健康保険に加入して新たに保険料を支払うこととなります。
「恒常的な収入」に株式譲渡益や配当が含まれるかについては明確な規定はありませんが実務では含めて計算されていることが多いようです。
ちょっと複雑な話になりましたが要約すると、
「元々申告不要の所得をあえて申告すると所得が表に出て健康保険の負担が増えたり扶養家族から外れたりする。株の損得だけでなくトータルで損得を考えましょう」
ということです。