アップルで1.5兆円、ソフトバンクで355億円の税負担などグローバル企業の巨額課税がニュースになっています。
アップルの場合は税率の低いアイルランドを活用した節税ですが、ソフトバンクの場合はそういう話ではありません。
ソフトバンクへの法人税課税355億円は買収のため資金還流約2.4兆円に関する課税です。
海外子会社から日本の親会社が配当を受けた場合、配当の5%に対して法人税が課税されます。
2.4兆円×5%×実効税率約30%≒355億円
税負担が増えたという印象で記事が出ていましたが、これには平成21年改正の影響もあります。
平成21年以前は子会社からの配当にも法人税がかかり、あとで現地で払った法人税を控除して二重課税を調整するという制度でした。
今回はシンガポール子会社からの2.4兆円の配当だったのでこれを例で考えます。
<改正前>
① シンガポール
利 益 2.9兆円
法人税 0.5兆円(法人税率17%)
配 当 2.4兆円(利益の全てを配当したと課税、源泉税なし)
② 日本
利 益 2.4兆円
法人税 0.7兆円(法人税率30%)
税額控除 0.5兆円(シンガポールと二重課税なので調整)
手取り 2.2兆円(2.4兆円-0.7兆円+0.5兆円)
<改正後>
① シンガポール(改正前と変わらず)
② 日本
配 当 2.4兆円
利 益 1200億円(2.4兆円×5%)
法人税 355億円(1200億円×法人税率30%)
手取り 2.36兆円(2.4兆円-355億円)
計算上は改正により手取りが1600億円増えたことになります。
従来は配当に対して一旦法人税を払う形でしたが、改正後は配当の5%だけが利益になり、その分の法人税を払えば課税関係が終了するようになりました。
手取りが増えたのはシンガポールと日本の税率の差です。
また税額控除は状況によっては全額できるとは限らないので、5%分さえ払えば課税が終了する今の制度はシンプルで計算が立ちやすいと言えます。
この改正ができた背景には日本企業が海外で稼いだお金を日本に還流しやすくして日本で設備投資などを促し、景気を活性化させたいという狙いがありました。
今回のケースは税負担355億円は確かに発生しますが、シンガポールからの配当は源泉徴収されないメリットと合わせて制度をうまく活用しているとも言えます。