昨日の役員報酬に続いて今日も「法人企業統計年報」から役員賞与のランキングを見ていきます。
<全体>
① 純粋持株会社 169万円
② 自動車・附属製品製造業 72万円
③ 化学工業 57万円
④ 石油石炭製品製造業 45万円
⑤ 非鉄金属製造業 45万円
<資本金1000万円未満>
① リース業 17万円
② 自動車・附属製品製造業 16万円
③ ガス熱供給水道業 8万円
④ 食料品製造業 6万円
⑤ その他物品賃貸業 6万円
<資本金1000~5000万円>
① 石油石炭製品製造業 52万円
② ガス熱供給水道業 37万円
③ その他輸送機械器具製造業 28万円
④ 医療福祉業 28万円
⑤ 非鉄金属製造業 26万円
<資本金5000万円~1億円>
① 木材木製品製造業 231万円
② 娯楽業 144万円
③ 汎用機械器具製造業 134万円
④ 広告業 131万円
⑤ その他輸送機械器具製造業130万円
<資本金1~10億円>
① 自動車・附属製品製造業 270万円
② 鉱業・採石業・砂利採取業161万円
③ 非鉄金属製造業 143万円
④ 業務用機械器具製造業 138万円
⑤ 生産用機械器具製造業 134万円
<資本金10億円以上>
① 業務用機械器具製造業 481万円
② 自動車・附属製品製造業 443万円
③ 電気機械器具製造業 422万円
④ 生産用機械器具製造業 372万円
⑤ 情報通信機械製造業 349万円
<全体の傾向>
・給料と比べると全体の業種はほぼ同じですが資本金別では異なる業種が多いです。
・製造業が多いのは給料と同じですがサービス業も目立ちます。
・資本金5000万円以上を境に急激に賞与が増えます。
資本金が5000万円未満の企業で賞与が少ないのは役員賞与の損金不算入も関係していると考えられます。
役員賞与については利益操作に使えるため税務上は経費になりません。
支給するのはもちろん会社の自由なので損益計算書上は賞与として表示されますが、法人税を計算する際に「なかったこと」にされてしまいます。
法人税がかかる上に賞与なので所得税もかかり、二重課税になってしまうのであまりお薦めしていません。
支給するなら事前確定届出給与としてあらかじめ届けておくか、プロ野球選手のように翌年の年棒で反映させることになります。
では資本金の大きい企業で役員賞与を出しているのはなぜでしょう。
1つは昔からある企業では経費にならなくても配当のように利益処分として賞与を出す慣習があるのと利益連動賞与の採用が考えられます。
利益連動賞与を支給するには次の要件が求められます。
・同族会社でない。
・利益に連動する算定方法が有価証券報告書に記載され、開示されている。
・事業年度開始3ヶ月以内に報酬委員会等で決定され、開示されている。
・利益指標確定後1ヶ月以内に要件を満たす全員に支給されている。
・損金経理している。
かなり条件が厳しいです。
そこで柔軟な制度設計を可能にして経営者のインセンティブとなるよう平成28年度税制改正が行なわれました。
・利益連動の指標にROE(自己資本利益率)などを追加
・譲渡制限付株式を賞与として交付した場合は譲渡制限が外れる年に損金算入可能に。
多少範囲が広がりましたがまだまだ役員賞与のハードルは高いです。
企業の活力を引き出すために更なる改正が望まれます。