確定申告を断る税理士たち

posted by 2024.03.19

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 前回は確定申告を税理士に頼まずに自分でする人が増えている、という内容でしたが今回はその逆。
今まで税理士に頼んでいたのに、税理士から断られるというケースを時々聞きます。
仕事を断るとはどういうことだ!?という感もありますが、次のような背景があります。

 

1.働き方改革

 昔の会計事務所はそれはそれはブラックで、確定申告時期には残業や土日出勤は当たり前。最終日は徹夜して早朝車で税務署のポストに投函しにいくなんて光景もありました。
今は当然そんな事務所はありません。そんなことをしていては人が辞めてしまいます。
ただでさえ中小企業は採用が難しく人手不足な上に、そもそも税理士を目指す人が年々減っています。
要件緩和で少し増えたとは言え、税理士試験の受験者数はピークの平成17年に比べ6割弱(約3万3千人)に減っています。

 また確定申告時期は12月決算(申告は2月)とも重なります。
12月決算は個人事業者が法人成りする時に分かりやすさから選ぶことが多い月です。また海外では12月決算が多いことから国際化の流れで12月決算に変更する大手も増えています。

 ということで2~3月に業務が集中すると職員に無理を強いることになり、繁忙期を基準に人を配置するのは人件費負担も大きいことから確定申告をできるだけ受けないという事務所も出てきています。

 

2.専門特化

 昔は「何でもやる」のが当たり前でしたが、ソフトの発達で記帳代行も減り、特色がないと会計事務所も生き残っていけない時代になりました。
相続税など特定の税目に特化する事務所、医業や飲食業など特定の業種に特化する事務所、コンサルや事業計画など経営支援に力を入れる事務所など尖った事務所が増えています。

 特化するためには「やらない仕事」を明確にする必要があり、個人の確定申告は断らざるを得ない、というケースも出てきます。

 

3.儲からない

 確定申告は通常の内容なら頑張れば自分でできますし、どんな税理士でもできます。そうなると手数料は低くなりがちです。
また年1回の申告だと資料も集まりにくく、手間の割には儲かりません。

 儲からないとなると、1や2の理由もあり、いっそ確定申告そのものをやめてしまおうという事務所も出てきています。

 

 一方、確定申告だけ他の税理士に頼んだり、自分でやることの危うさもあります。

 税法は1つの税目だけを見てればいいだけでなく、複数の税目が絡み合うことがあります。
例えば相続税を支払った後に不動産等を売却した場合、払った相続税を譲渡所得の経費にできる「相続税の取得費加算」という制度があります。
また中小企業では所有と経営が分離していないことから、「会社≒親族」というケースも多いです。その場合、個人と法人を合わせて税負担や資金繰りの最適化を図る必要があります。

 

 税理士との付き合い方にはいろんなパターンがありますが、コミュニケーションをしっかり取って、よりよい形を一緒に考えていくという点は変わらないと言えそうです。