カード払いとインボイス

posted by 2024.02.28

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 インボイスが始まって5か月。

 実務的には想像以上に大変でした。
会計事務所としては顧問料を値上げしないと割に合わないレベルですが、まだまだ厳しい環境にある中小企業も多く、法改正を理由に値上げするのは難しい状況です。

 特に厄介なのが経費精算とカード払いです。
経費精算の場合は細かすぎてインボイスがあるかどうか全領収書をチェックし切れない、という悲鳴が上がっています。
カード払いについては領収書がすべてあるとは限らず、確認自体が事実上不可能なこともあります。

 こういう時って消費税の控除を諦めないといけないのでしょうか?

 

<そもそもインボイスが要らない場合>

・簡易課税を適用している

・少額特例が使える 

※少額特例

要件:自社の基準期間の課税売上高が1億円以下

内容:税込1万円未満ならインボイス不要(インボイスがあるかどうか、免税かどうかも確認不要)

期間:令和5年10月1日~令和11年9月30日の6年間

 

<少額特例が使えない場合>

 税込1万円以上の支払いや基準期間の課税売上高が1億円超の場合は少額特例が使えないため、経過措置を活用します。

・8割控除(5割控除)

 免税事業者からの仕入れであっても、令和5年10月1日からの3年間は8割、令和8年10月1日からの3年間は5割を控除できます。

 相手がインボイス登録事業者なのに確認できていない場合は、この8割控除の趣旨と合わないため、本来は控除することができません。
ただ、確認していないだけで登録があれば10割、最低でも8割は引けるはずなので、実務的には8割は引いておいても問題ないように思います。
事務負担と見合わないので、調査で指摘されたら修正すると割り切って10割引くという会社もあるかも知れません(税務署が全件調べ切れるとも思えませんし)。

 今は8割なのでまだいいですが、3年後には5割、6年後には0割になるので、今後に関してはきっちりやるのか、割り切って消費税をちょっと多めに払うのかの判断は必要になってきます。

 

<カード払いの場合>

 カード切ったら領収書は要らないという認識の方もまだまだ多く、領収書がないケースも見受けられます。
またネット購入したもので領収書がないケースもあります。
少額特例や8割控除が使えるケースはいいとしてそれ以外のカード払いは、インボイス付き領収書がないと全く控除できないことになります。

 ただカード払いに関しては、インボイス導入前であっても元々領収書は必要でしたが、税務署がそれほど厳しい運用をしてこなかったため、全ての領収書を確認することなく仕入税額控除を認められていました。
インボイスを機にきっちり見るぞ!という可能性もゼロではないですが、次のような調査方針を発表しているぐらいなので急に取扱いを変えることはないように思います。

※調査方針

・インボイスの税務調査は、従来と変わらず大口で悪質な事例に限定して実施する
・記載事項の不備をあげつらうような調査はこれまでと同様しない
・制度の定着を図ることが当面重要な課題なので柔軟かつ丁寧な対応をしていく

 

 とは言え油断は禁物なので、カード払いの領収書をきっちりもらう、ネット購入の領収書は紙かデータで残すことを習慣付けていきましょう。