固定資産を売却した場合、土地に関しては単純に買い値と売り値の差額で計算できますが、建物の場合は減価償却する分、買い値は減っていきます。
<例>
・購入時:土地3000万円、建物3000万円、計6000万円
・売却時:土地4000万円、建物1500万円、計5500万円
買った時より値段が下がっているから税金はかからない、とは限りません。
使用に伴う建物の減価償却費が1000万円あれば、買い値(取得費)は「6000万円-1000万円=5000万円」となり、売却益が500万円発生します。
この減価償却費ですが、法人と個人では税金に違いが出てきます。
仮に6月末に売却したとして、上記の例で半年分の減価償却費が200万円あるとします。
<法人>
≪売却年分を償却した場合≫
・売却益:5500万円-(6000万円-1200万円)=700万円
・減価償却費:-200万円
⇒700万円-200万円=500万円の利益
≪償却しない場合≫
・売却益:5500万円-(6000万円-1000万円)=500万円
・減価償却費:0円
⇒500万円-0円=500万円の利益
売却年分の償却をしてもしなくても利益は変わらず、法人税も変わりません。
<個人>
法人では減価償却が任意ですが、個人では原則として強制です。
ただし、売却年分については事業所得や不動産所得の中で減価償却するか、減価償却せずに譲渡所得で反映させるかどちらかを選ぶことができます。
≪売却年分を償却した場合≫
・譲渡所得 :5500万円-(6000万円-1200万円)=700万円
・事業所得等:-200万円(経費)
≪償却しない場合≫
・譲渡所得 :5500万円-(6000万円-1000万円)=500万円
・事業所得等:0円(経費)
法人と同じように見えますが、個人は所得によって税率が変わります。
譲渡所得であれば長期20%、短期39%(住民税込み、別途復興税あり)ですが、事業所得等は累進課税で15~55%となります。
つまり差引の利益は同じでも、個人では所得の違いによって適用される税率が異なるため、税負担も変わってきます。
さらに売却損の場合には事業所得等とは損益通算できないため、その点にも注意する必要があります。
事業や不動産貸付で使っている建物を売却した場合には、どちらが得かシミュレーションした上で申告するようにしましょう。