財産債務調書の改正

posted by 2024.01.16

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 確定申告の時に提出する書類の一つに「財産債務調書」というものがあります。

 

 これは税務署が富裕層の実態を把握するために、一定額以上の所得や財産を持つ人に提出を義務づけるものです。
義務とは言え、以前は罰則がなかったので提出していないケースも多々ありました。
そこで平成28年に”アメとムチ”の改正があり、調書に記載していない財産に関して所得税の申告漏れがあった場合には加算税を+5%、逆に記載していた財産に関して所得税と相続税の申告漏れがあった場合には加算税を▲5%することとなりました。
また提出がない場合には税務署から何度も電話がかかってくるようになったこともあり、以前に比べると提出件数は増えています。

 

 この財産債務調書に関してさらに改正があり、令和5年分から次の点が変わります。

① 提出期限

<改正前> その年の翌年3月15日

<改正後> その年の翌年6月30日

 従来も3月15日を過ぎてから提出を依頼する電話はかかっていましたし、確定申告時期とずらすことで提出しやすくするのが狙いと考えられます。

 

② 提出義務者

<改正前>
・退職所得以外の所得の合計額が2000万円超
  かつ
・年末の財産合計が3億円以上または国外転出特例財産(株や未決済信用取引)が1億円以上

<改正後>
・上記は変わらず
・年末の財産合計が10億円以上

 改正前はフローとストックの両方が条件でしたが、改正後はストックだけで10億円以上の場合にも提出義務があります。

 

③ 記載省略項目の追加

<改正前>
・100万円未満の家庭用財産や事業用の未収入金等

<改正後>
・300万円未満の家庭用財産や事業用の未収入金等
・50万円未満の預貯金残高(但し口座番号は記載必要)
・青色決算書や収支内訳書に記載された減価償却資産

 

 富裕層への課税強化の傾向は今後も強まると考えられるので、財産債務調書の提出要請もさらに強くなっていきそうです。