控除対象外消費税とは

posted by 2023.06.13

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 税金は1つでも十分ややこしいものですが、中には2つの税金にまたがるものもあります。

 消費税に関して言うと、預かった消費税から払った消費税を引いて残額を国に払うのが原則的な考え方ですが、引き切れない消費税を法人税や所得税の計算上経費にする「控除対象外消費税」いうものがあります。

 

1.発生の仕組み

 ちょっと分かりづらいので例を挙げて説明します。

<例>
・商品売上1.1億円(うち消費税1000万円)、土地売上2500万円
・共通経費5500万円(うち消費税500万円)

 消費税だけで見ると、預かった消費税1000万円-払った消費税500万円=500万円が納める消費税になりそうですが、そうはなりません。

 消費税は課税売上に対応する部分しか控除できないので、課税売上割合を計算して控除できる部分を算出します。

課税売上割合:商品売上税抜1億円/(商品売上税抜1億円+土地売上2500万円)=80%

・経費の消費税500万円 × 80%=400万円

・納める消費税:1000万円-400万円=600万円

 払った消費税は500万円なのに400万円しか引けていないので、100万円が宙に浮いてきます
この浮いた部分が「控除対象外消費税」です。

 

2.控除対象外消費税の取扱い

① 原則:法人税や所得税では全額経費

② 交際費に係るもの

 法人税では交際費は限度を超えると経費にならないため、控除対象外消費税についても交際費に対応する部分を抽出して交際費に上乗せします。

③ 資産に係るもの

 固定資産や繰延資産については一括で経費になるものではないため、控除対象外消費税についても次のいずれかの方法により年数を掛けて経費にします。

資産に合算:耐用年数に応じて減価償却費として経費化

繰延消費税:「繰延消費税」として別科目で管理して60か月で償却(初年度は1/2)

・少額の場合:課税売上割合80%以上、一の資産につき20万円未満、棚卸資産に係るものであれば一括で経費化OK

 

3.控除対象外消費税が発生しないケース

・税込経理を採用している場合(資産や経費に消費税が含まれるため)

・課税売上高が5億円以下かつ課税売上割合が95%以上(対象外が少額なので100%扱い)

 

 発生するケースは限られますが、土地の売却など臨時的な取引により課税売上割合が下がった場合は、どの処理が有利か検討した上で処理するようにしましょう。