相続時精算課税の通知

posted by 2023.06.12

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 相続時精算課税制度は高齢者に偏った財産を若年世帯を移転することを狙った制度で、一定の要件を満たす子や孫への贈与税が軽減されます。

 

<概要>

・要件:60歳以上の祖父母又は父母から18歳以上の子や孫への贈与

・税率:累計2500万円まで非課税。超える部分は20%

・加算:相続時に加算して精算。相続税の追加納付又は贈与税の還付。

・申告:贈与税の申告が必要

 

<改正>

・令和6年1月から精算課税を選択していても年110万円の非課税枠が利用可能に

・暦年課税の加算期間が3年⇒7年へ延長

 相続時精算課税は、少額の贈与でも贈与税の申告が必要で煩雑なことなどデメリットもあったため、暦年課税の申告数の1割程度と利用が低迷していました。
そこで改正により相続時精算課税を選択していても使える110万円の非課税枠が創設され、この範囲であれば贈与税の申告が不要で相続時の加算も不要とされました。

 また暦年課税の加算期間が3年⇒7年に延長されたことにより節税効果が縮小したため、精算課税の選択を検討する人が増えています。

 

<注意点>

・一度選択するとやめられない点は従来と変わりません。

・相続時に加算するので基本的に相続対策にはなりません(改正の110万円部分は効果あり)。

・贈与実行から相続までの期間が空くと加算漏れが起こる可能性がある。

 相続時精算課税制度が導入されたのは2003年。
親や祖父母主導で20年前に一度だけ精算課税で贈与をしているような場合、もらった子や孫が相続時に加算することを忘れる事例も発生しているようです。
税理士が変わっている場合や贈与時の書類を失くしている場合はより忘れやすいかも知れません。

 

 そこで東京国税局では精算課税で贈与を受けた相続人に通知する取組みを試験的に実施しています。
ただし、全員に通知されるわけでなく、次のような場合に限られます。

・令和4年10月相続開始分から

・相続税の申告期限の約3か月前に郵送で通知

・相続人全員が東京国税局管内に住んでいる

・相続税がかかりそうな財産規模の場合のみ

 

 今後、提出範囲を広げたり、他の国税局にも広がって欲しい取組みではありますが、まずは書類をしっかり残す、贈与時に十分説明するなど申告漏れが起こらないよう注意しましょう。