死亡退職と源泉徴収

posted by 2023.03.30

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 お客様から「従業員が亡くなったのですが給料の源泉徴収はどうしたらいいですか?」というご質問をいただきました。

 ブログに書くには重い内容ですが、起こってしまうことはあるので整理しておきます。

 

<給料>

・死亡後に支給するものは所得税の対象ではないので所得税の源泉徴収は不要です。

・受け取るのは遺族であるため、相続税の対象となります。所得税は発生しないものの財産の額によっては相続税が発生します。

 

<年末調整>

死亡日を年末と考えて年末調整します。扶養親族の判定はその時点で1年分の所得を見積もります。

・生前に支払った給料までが対象で、死亡後に遺族に支払った給料は含みません。

還付金は遺族の相続財産となります。逆に徴収になった場合は相続債務になります。

 

<住民税>

・死亡後に支給する給料からは住民税を天引き(特別徴収)しません

住民税は前年の所得に応じて6月~5月に天引きしています。したがって今日亡くなったとしても5月までの分は払う必要があります。

・通常の退職であれば最後の給料で一括徴収できますが、死亡退職の場合は一括徴収せずに異動届を提出して普通徴収に切り替えて下さい。

・普通徴収の納付書を受け取った遺族が銀行等で納付します。支払った金額は相続税の計算上、債務として控除されます。借金が多いなどの理由で相続放棄している場合は払う必要はありません。

亡くなった年は住民税は発生しません。翌年1月1日を基準に住民税を計算するので、今日亡くなった場合は令和5年分の住民税はかかりません。

 

<退職金>

・退職金規定に基づいて退職金や弔慰金が支払われることがあります。

・給料と同様、所得税や住民税の源泉徴収は必要ありません

中退共に加入していた場合は退職届は会社が出しますが、請求手続きは遺族が行います。そのため退職届を出したあとに共済手帳を遺族に渡します。

弔慰金は香典の意味合いがあるので、相続税も原則課税されません。業務中の死亡であれば給料の3年分、業務外であれば給料の半年分まで非課税です。

退職金は相続税の対象になりますが非課税枠があります。非課税枠は「500万円 × 法定総則人の数」です。

 

<社会保険関係>

雇用保険:死亡の翌日から10日以内にハローワークへ「資格喪失届」を提出します。

社会保険:死亡の翌日から5日以内に年金事務所へ「資格喪失届」を提出します。

 

<生命保険>

・従業員を被保険者として生命保険を掛けていた場合は請求の手続きをします。

・養老保険のように受取人が遺族の場合は直接遺族に振り込まれます。定期保険のように受取人が会社の場合は会社に振り込まれるので、遺族へは退職金として支払うことになります。

 

<役員の場合>

役員の方が亡くなった場合は登記の変更が必要です。必要な書類は死亡届(遺族名義で作成)だけです。

・亡くなってから2週間以内が期限ですが、少々であれば過ぎても罰金はかかりません。

 

 突然のことでバタバタすることもあると思いますが、期限もそこまで厳格ではないので落ち着いて1つずつ手続きしていきましょう。