前回の続きで退職給付会計の原則法について見ていきます。
原則法では将来発生する退職金を今後の利回りで割り戻して現在における必要額を逆算します。
2.原則法
① 計算方法
<流れ>
・退職給付債務の計算 ⇒ 退職給付費用の計算 ⇒ 退職給付引当金の計上
<退職給付債務の計算>
・期末までに発生している退職給付見込額 ÷ 割引率
期末までに発生している退職給付見込額の計算については「期間定額基準」と「給付算定式基準」の2つの方法があります。
「期間定額基準」…予想退職時期と割引率を使って計算し、勤務期間で割るので毎期の費用は同額になります。
「給付算定式基準」…規程に応じた予想支給額を勤務期間に応じて割り振っていくので毎期の費用は異なってきます。
どちらの方法を使うかは企業の任意ですが、一度選択すると変更はできません。
割引率は国債など安全性の高い債券の利回りを参考に計算しますが、2021年3月決算の平均では0.47%となっています。
<退職給付費用の計算>
・勤務費用+利息費用+過去勤務費用+数理計算上の差異-期待運用収益
・勤務費用:退職給付債務のうち当期への割り振り分
利息費用:前期末の退職給付債務に対する利息
過去勤務費用:退職給付水準の改定による変動額
数理計算上の差異:退職給付債務や運用収益に関する見積もりと実績の差異
期待運用収益:外部拠出した年金資産の運用によって発生すると期待される収益
期待運用収益率は2021年3月決算の平均では1.78%となっています
<退職給付引当金の計上>
・退職給付債務-年金資産-過去勤務費用-数理計算上の差異
退職給付引当金と退職給付債務は必ずしも同額になるわけではなく、退職給付債務から年金での積立額や差異調整分などを差し引いて、不足額を退職給付引当金とします。
② 仕訳(簡便法と同じ)
<決算時>
(退職給付費用)(退職給付引当金)×××
<退職時>
(退職給付引当金)(普通預金等) ×××
税務上の取扱いも簡便法と同様で、損金になるのは退職金の実際支払額と掛金拠出額です。
理論上の退職給付費用の算出額は損金にならず別表で加算されます。
なるべく簡単に解説しましたがそれでも複雑です。
また予想の要素も多いので計算方法によっては結果に差が出てくることもあります。
計算する際は専門家や運用会社と連携を取りつつ、会社の考え方に合った方法を採用するようにしましょう。