中小企業と退職給付会計 ② 簡便法

posted by 2022.09.14

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 前回の続きで退職給付会計の計算方法について見ていきます。

 退職給付会計の計算については原則法簡便法があり、従業員300人未満の会社については簡便法の使用が認められています。
また300人以上であっても年齢や勤務期間に偏りがあるなどの理由により、計算結果に高い信頼性が得られないと判断できる場合にも適用が可能です。
簡便法は昔の税法上の退職給与引当金に考え方が近いため、こちらから先に見ていきます。

 

1.簡便法

① 計算方法

 割引率や比較指数を使う方法もありますが、最も簡単なのは「期末自己都合要支給額=退職給付債務」とする方法です。
期末時点において全従業員が自己都合で退職した場合に必要となる退職金を退職給与規程に基づいて計算します。
「基本給 × 勤続年数に応じた支給係数 × 退職理由に応じた割合」で計算する会社が多いです。

 企業年金を導入している場合には直近の年金財政計算上の数理債務を退職給付債務とする方法が最も簡便です。

 

② 仕訳

<決算時>

(退職給付費用)(退職給付引当金)×××

 初年度は一気に計上されるので経費が多くなりますが、2年目以降は期首と期末の差額を積み立ていくため、少しずつ増えるイメージです。

 まだ退職した訳ではなく債務としては確定していないので税務上は経費にならす、所得計算上は別表加算します。

 企業年金の場合は掛金拠出額を経費処理し、税務上も損金になります。
これは確定給付型でも確定拠出型でも同じです。

 

<退職時>

(退職給付引当金)(普通預金等) ×××

 退職所得控除(勤続1年あたり40万円、20年以降は1年あたり70万円)を超える場合には所得税と住民税の源泉徴収が必要です。

 税務上は取り崩した退職給付引当金は実際に支払っているので、別表減算して損金処理します。

 

 原則法は次回へ続きます。