前回からの続きで退職金の優遇税制の制限について見ていきます。
退職金の優遇税制は次の3つです。
・退職所得控除
・1/2課税
・分離課税
このうち一定条件下で制限があるのが「退職所得控除」と「1/2課税」です。
<退職所得控除>
① 概要
複数の会社から退職金をもらった場合、会社ごとに退職所得控除が計算できるわけではなく、合計で計算します。
年がずれる場合は前年以前4年内であれば重複期間の調整で必要で、5年以上であれば調整はありません。
② 計算
・勤続年数(1年未満切上げ)に基づく退職所得控除額-重複期間(1年未満切捨て)に基づく退職所得控除額
・前年以前4年内(確定拠出年金の場合は前年以前19年内)に退職金をもらっていれば重複、それ以前であれば重複していても使えます。
・重複していても前回の退職所得控除額を使い切ってなければ残りを今回使用可能です。
<1/2課税>
① 改正前
・役員が勤続5年以内で退職した場合は1/2課税の適用なし
② 改正後(令和4年1月1日以降の退職)
・従業員でも勤続5年以内で退職した場合は1/2課税の適用なし
・ただし、退職所得控除額を控除した残額のうち300万円以下の部分には1/2課税の適用あり
・1/2課税は300万円にそのまま使い、退職所得控除額は300万円超の部分に使う。
例:退職金1000万円、勤続5年
300万円 × 1/2=150万円
700万円-退職所得控除額200万円=500万円
150万円+500万円=退職所得650万円
ちょっと分かりづらいですが少なくとも退職金が380万円以下なら従来通り1/2課税は可能です(退職所得控除の最少額が80万円はあるため)。
退職所得控除額を超えて税額が出る人自体が少ないですし、さらに300万円以上オーバーしている人となると影響する人は少ないかも知れません。
なお役員に対しては特に改正はないので従来通りで、5年以下なら金額にかかわらず1/2課税が使えません。