前回の続きで上場株式の配当の申告方法について見ていきます。
1.前回のおさらい
・特定口座源泉徴収あり(申告不要)
・申告分離(申告必要)←繰越損失使用
・総合課税(申告必要)←配当控除使用
総合課税を選択するのは申告不要と比べて有利になる場合です。
例:課税所得695万円以上900万円未満
<所得税>
・総合課税:23%-配当控除10%+復興税=13.273%
・申告不要:15%+復興税=15.315%
<住民税>
・総合課税:10%-配当控除2.8%=7.2%
・申告不要: 5%
<合 計>
・総合課税:20.473%
・申告不要:20.315%
2.別々の申告
上記の例は合計では申告不要が有利ですが、別々に見ると所得税では総合課税が有利、住民税では申告不要の方が有利となります。
このような場合、所得税と住民税を別々に申告することができます。
また税率だけでなく、総合課税で申告することのデメリットであった国民健康保険料や児童手当等への影響も阻止することができます。
ただし、所得税の規定である扶養控除や配偶者控除等への影響は残ります。
3.手続き
改正が続いたため、年によって手続きは異なります。
① 令和2年以前
通常は所得税の確定申告をすると自動的に住民税も同じ内容で申告されます。
それをあえて住民税だけ配当を含めずに申告すれば、住民税についてはあえて申告した方が生かされます。
② 令和3年~令和4年
申告書第2表の一番下に住民税の情報を書くゾーンがあります。
ここに新しく「特定配当等の全部の申告不要」という欄が増えています。
その欄に「〇」をつけると住民税で申告不要を選択することになります。
したがってわざわざ住民税を別で申告する必要がありません。
③ 令和5年以後
令和4年度改正により、別々に申告すること自体ができなくなりました。
金融所得は一体的に課税するものであって別々に申告することは想定していないというのがその理由のようです。
したがって合計の税率比較、扶養控除や健康保険料、児童手当などへの影響を加味して、申告不要か総合課税のどちらかを選ぶことになります。
改正があったことで、より得する方を選べなくはなりますが、制度としてはほんの少しシンプルになったと言えるかも知れません。