株式投資と確定申告 ② 配当控除

posted by 2022.01.18

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 前回の続きで配当控除について見ていきます。

 上場株式の配当は「特定口座源泉徴収あり」なら確定申告の必要はありませんが、確定申告した方が得するケースがあります。

特定口座を複数持っていてプラスとマイナスがある

・過去の損失を確定申告して繰り越している

・配当控除を使って還付が受けられる

 配当控除というのは配当を申告した際に税額控除により軽減される制度です。
配当は企業の税引後利益から行われるので、受け取った人がさらに所得税を課税されると法人税と所得税の二重課税が発生します。
そこで配当の内容や所得に応じて、所得税では「配当×10%」※1、住民税では「配当×2.8%」※2が控除されます。

※1 上場株は10%、投資信託は5%、一部の外貨建投信は2.5%、課税総所得金額等1000万円超の部分はそれぞれ半分

※2 上場株は2.8%、投資信託は1.4%、一部の外貨建投信は0.7%、課税総所得金額等1000万円超の部分はそれぞれ半分

 

 配当控除した方がいいかは所得税率との比較により判定します。

1.特定口座源泉徴収あり(確定申告不要)

・税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)を天引きされて完結

 

2.申告分離課税(確定申告必要)

・売却損と配当を通算後に税率20.315%

 

3.総合課税(確定申告必要)

① 課税所得195万円未満:所得税5%-配当控除10%+住民税10%-配当控除2.8%=7.2%

② 課税所得195万円以上330万円未満:所10%-配控10%+住10%-配控2.8%=7.2%

③ 課税所得330万円以上695万円未満:所20%-配控10%+住10%-配控2.8%=17.41%

④ 課税所得695万円以上900万円未満:所23%-配控10%+住10%-配控2.8%=20.473%

 計算式が少し合ってないのは配当控除をした後の所得税に復興税2.1%を足しているためです。

 ①②③の税率は「1.特定口座源泉徴収あり」の税率20.315%より低いため、確定申告で総合課税に含めて配当控除した方が有利になります。

 ④の税率は20.473%>1の20.315%となり、配当控除を考慮しても確定申告する方が不利です。

 課税所得で695万円というと基礎控除のみの給与所得者であれば額面938万円になります(実際には社会保険料等も考慮)。

 

 ここまででも十分複雑なんですが、話はここで終わりません。
配当の確定申告の仕方によっては扶養控除や国民健康保険にまで影響が及びます。
「1.特定口座源泉徴収あり(確定申告不要)」は所得はないものとして扶養控除や国民健康保険の計算に影響はしませんが、「2.申告分離課税(確定申告必要)」や「3.総合課税(確定申告必要)」では所得としてカウントされてしまいます。
その場合、扶養控除や国民健康保険料への影響も加味して申告した方が得かどうかを判定する必要があります。

 

 配当に関しては所得税と住民税を別々に申告する方法もあります。
改正で変わる部分でもあるので次回見ていきます。