相続税の税務調査 ①

posted by 2021.08.23

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 税務調査は税理士でない限り何度も経験するものではないですが、中でも少ないのが相続税

 

 個人単位で考えて身内の方が亡くなるのは10年、20年に1回の出来事。
また日本全体で考えると、1年間で亡くなる方が約138万人(令和元年度)、このうち相続税の課税対象となった方が115,267人(8.3%)です。
そのうち税務調査があったのは10,635件なので、申告が必要な方の1割弱、亡くなった方全体の1%弱と一部の人に限られています。

 とは言え、税務調査があった場合には、9,072件(85.3%)で何らかの漏れが見つかっており、他の税目と比べても割合はかなり高くなっています。
なぜこんな割合が高いかと言うと「隠している人が多い」のではなく、「分からない」からだと考えられます。
何せ財産を管理している本人が亡くなっているだけに、遺族が完璧に財産を把握するのが難しい面があります。

 

 どんな財産が漏れているかと言うと、現金預貯金等33.1%、土地12.4%、有価証券10.8%、家屋1.9%、その他41.8%となっています。
資産家というと土地や株式のイメージがありますが、実際の税務調査で漏れが指摘されるのは現金預貯金等が最も多くなっています
土地や建物といった不動産は文字通り動きませんし、株式に関しては証券会社が関わるだけにはっきりとした資料があります。
その点、預金に関して言うと銀行は日本中に無数にありますし、名義を変えることもできます。また現金も引き出して長年タンス預金にすることもできます。

 

 このような理由で現金預貯金等が漏れることが多いだけに税務署も入念にチェックした上で税務調査に来ます。
本人が使っていそうな銀行には片っ端から照会を掛けて最長10年分の履歴を取り寄せます。
また相続人である妻や子だけでなく、相続人でない孫の口座も含めて資金の移動がないかを確認しています。

 

 次回は実際の現場での税務調査がどのように進むかを見ていきます。