相続税の税務調査 ②

posted by 2021.08.24

chokin_tsuchou

 前回の続きで相続税の税務調査・現場編を見ていきます。

 

<事前連絡>

 調査希望日の2週間~1か月ほど前に税務署から代理人である税理士に電話があります。
相続人の方との日程を調整した上で調査日を決めます。

 相続税は事前連絡なしに突然来ることはまずありません。
法人税や所得税で突然来るのは、昨日の売上げを押さえてチェックしたい、普段使っている書類を隠されないようそのまま見たい、というのが目的です。
相続の場合は申告の時点で亡くなってから10か月経ってますし、調査に来るのも申告してから1~2年後です、
なので突然来ても連絡してから来ても状況はあまり変わりません。

 

<調査期間>

 通常は短くて半日、長くて1日で終わります。
他の税目は少なくとも2日はあるのに比べると短めです。
理由としては、亡くなった本人に話を聞けないことや亡くなったあとに諸々整理しているので残っている書類も限られているためです。
なので銀行や証券会社に照会を掛けたり、過去の所得税の申告書を分析したりして、書類上で相続税の申告額が正しいか事前に検証しています。

 ではなぜ税務調査に来るのか。
それは書類からは分からない亡くなった方に関する情報や財産の管理状況をヒアリングするためです。

 

<ヒアリング内容>

① 基本情報(家族構成、経歴、趣味、交友関係等)

 世間話的に聞いてきますが、どのような仕事をしていたかを聞いて財産額を想定します。
趣味や交友関係については、とういったことにお金を使っていたかという観点で聞いてきます。
「絵や骨董品を集めるのが趣味で…」となると価値のあるものを買っているのでは、という想定をします。
事実であることが前提ですが、旅行やギャンブルは消費して終わりで財産的に何も残りません。

 

② 病状や死因

 入院の有無や意識の有無なども確認します。
元気な間の財産管理は普通本人がしますが、病気等してからは相続人の方がサポートすることが多くなります。
そうすると相続人の方も預金移動の経緯などを知ってるはずで聞かれると答えられるはずです。
もし相続人の方が動かしていて、銀行に記入した書類も残っているのに「知らない」と答えると何か隠しているのではと疑われることになります。

 

③ 書類の確認

 通帳や大きな出費の書類などを確認します。
通帳の動きは税務署が銀行から取り寄せた取引明細でも分かりますが、現物を見るのは手書きのメモがあるためです。
保管場所についてくることもあります。
孫の通帳があったり、認印がいくつもあると名義預金の存在を想定されます。
ハンコに関しては印影を取って帰ることもあります。
大きな出費というのは家の改装費や美術品、車など財産につながるものかないかを確認します。

 

④ 相続人に関する質問

 亡くなった被相続人だけでなく相続人のこともいろいろ聞かれます。
経歴や取引銀行など「何で私のことまで聞かれんの?」という内容であまり気分は良くありません。
税務署は相続人の預金なども調査する権限があるので、被相続人と相続人の間で資金移動がないかも書類上で確認しています。
その裏付けをヒアリングしながら確認しています。

 

<スケジュール>

 10時ジャストに始まって昼前まで経歴などをヒアリングします。
1時間の昼休憩をはさんで、昼から書類確認や不明点の質問があります。
15時前後に終わることが多く、長くても16時半頃までです。
現場調査が終わると、あとは代理人である税理士が電話や税務署での折衝をするのでまた家に来ることは通常ありません。

 

 今回は大まかな流れを解説しましたが、どういうケースが調査に来やすいか、調査での注意点などを次回見ていきます。