法人税の国際ルール変更

posted by 2021.07.5

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 新聞やテレビで「歴史的な合意だ」と言われている国際的な法人税課税ルールに関する合意ですが、一体何が歴史的なんでしょうか。
一般の中小企業にとっては直接の影響はありませんが、間接的に見ればゼロではないので簡単に見ておきます。

 

① 実効性が高い

 今回の合意はOECDに加盟している130の国と地域が対象であるため、実効性が高いと言えます。
先進国であるG7での合意、新興国も含むG20での調整などを経て、2021年10月までに最終合意し、2023年からの実施を目指すとされています。

 

② 最低法人税率

 パナマ0%(国外分)、マカオ12%、アイルランド12.5%、香港16.5%など世界には法人税率の低い国があります。
これらのタックスヘイブン(税金天国)に会社を置くことによる法人税節税が横行しているため、最低法人税率として15%が合意されました。
これまでは自国への産業誘致のため、先進国も含めて法人税率引き下げのチキンレースが行われてきましたが、それも転換点を迎えることになります。

 

③ 多国籍企業への課税強化

 フェイスブックやマイクロソフトなどIT大手はハードではなくソフトで儲けているため、会社を好きなところに置けます。
これまでの税制は利益を生み出す会社がある場所を基準にしていましたが、それでは世界中で稼ぐ多国籍企業に課税することが難しかったため、今回の合意では儲け過ぎている分を市場国での売上げで按分して課税することになりました。
具体的には利益率10%を超える部分を抽出して、そのうちの20~30%を国際間で分け分けします。
IT大手をメインのターゲットにしていますが、世界で稼ぐIT以外の会社も対象で、現時点では世界で81社、日本では6社(携帯大手3社、ソニー、武田薬品、トヨタ)が対象です。

 

 OECDの中でもアイルランドのように合意していない国が9か国あり、実際の課税範囲など細かい内容に関してもまだまだ隔たりがあるので予断を許しませんが、実現してかつ実効性のあるものとして機能すれば確かに歴史的な合意と言えるでしょう。