生産緑地の2022年問題その後

posted by 2021.05.19

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 生産緑地の2022年問題が来年に迫っていますが、懸念されていた地価の大幅下落や緑地の減少といった事態は起こらなさそうです。

 

 生産緑地とは都市部において緑地を保全するために指定を受けた農地や山林のことを言います。
指定を受けると30年間農業を続ける義務がありますが、固定資産税がかなり軽減され、相続税の納税猶予が受けられるといった税制上の特典があります。
生産緑地のほとんどが1992年に指定されているので、2022年に税制優遇も切れます。
すると税負担の増加や後継者不足等から農地を宅地にして売却する地主が増えて、需給バランスから地価が下落したり、緑地が減少することなどが懸念されていました。
これがいわゆる「生産緑地の2022年問題」です。

 

 国としては極端な変動の緩和と緑地の保全のために次のような法改正を行っています。

<生産緑地法改正(2017年)>

・面積要件の緩和(500㎡以上⇒300㎡以上)

・用途の緩和(直売所やレストラン等の設置が可能に)

特定生産緑地指定制度の創設(10年ごとに切り替えのチャンス)

 

<都市農地貸借法新設(2018年)>

・市民農園などに生産緑地のまま貸し出しが可能に

 

 これらの施策もあって、首都圏1都3県では8割近くが生産緑地を延長する方向で、首都圏以外で生産緑地の多い大阪府や愛知県でも同様の傾向が見られます。
首都圏では東京都町田市や立川市など比較的地価の高い地域で継続が9割以上と高く、逆に住宅地のニーズが高い埼玉県川口市やさいたま市では5~6割とやや低くなっています。

 

 農業の後継者難の問題は依然としてありますが、コロナ禍で市民農園を借りる希望者が増えていたり、古民家+農業体験の旅行プランが流行っていたりと農業を取り巻く環境も変わってきているので生産緑地も一定規模は残っていきそうです。