低解約返戻金型保険の節税封じ

posted by 2021.05.20

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 通常の税制改正は決まってから適用されるまでに1年以上の期間があります。
特に増税方向のものについては経過措置も含めてその期間が長めです。
ところがたまに決まってすぐ適用になるようなものもあります。
今回取り上げる「低解約返戻金型保険の節税封じ」6月末に決まって7月1日から適用予定です。
対策が必要なケースもあると思われるので、本決まりではない段階ですがフライングでご紹介しておきます。

 

<概要>

 法人で入った保険を極端に低い対価で個人に名義変更することで、個人の所得税を節税するスキームが規制されます。

 

<節税スキームの流れ>

① 法人で逓増定期などの保険に加入(例:500万円×5年、うち半分経費)

② 解約返戻率が1割以下の時期に名義を個人に変更(100万円)

③ 法人では名義変更時に損失発生(100‐積立額1250=▲1150万円)

④ 個人で保険料を1回支払(年払い500万円)

⑤ 個人で保険解約(返戻率約9割で2750万円受取り)

⑥ 個人は一時所得課税({2750-600-50)}×1/2=1050万円に総合課税)

 どこが節税かと言うと個人は将来9割の返戻率で解約できる保険を1割以下の対価で手に入れることができて、かつ受取時は一時所得扱いで所得を半分にすることができます。
法人から個人に給料で払っていれば多額の税金がかかるところが、この方法を使えば税負担少なく法人から個人へ資金を動かすことができます。
②の名義変更の時点では、解約返戻金相当の100万円がこの保険の時価になるため、この方法は基本的に合法です。
なお、④で個人が保険料を1回払っているのは、名義変更してすぐの解約であれば露骨な節税に見えるので、1回保険料を払うことでその印象を弱めています。
販売する保険会社でもこういった使い方を想定して、極端に解約返戻金を低い期間を設定した保険を作っています。

 

<改正案>

・②の名義変更時の時価を100万円(解約返戻金相当)→1250万円(法人での資産計上額)に変更

・この計算により③の法人での損失処理ができなくなります。

・保険を買い取る個人は1250万円を支払う必要があり、資産移転のコストが増えます。

・個人が100万円しか払わない場合は差額は「役員賞与」として課税されます。

 

<対象となる保険>

・低解約返戻型保険(名変時の解約返戻金<資産計上額の7割)

・復旧することができる払済保険

 1/2損金の保険の場合、返戻率が35%未満なら引っ掛かることになります。

 

<適用時期>

・令和3年7月1日以後の名義変更に適用

・令和元年7月8日以後に契約した保険から適用

 2年以上前に契約していれば今回の改正の適用外なので、影響を受ける契約はあまり多くありませんが、今後この節税スキームは使えなくなります。

 

 保険は入った後は内容を忘れがちですが、目的や使い方、税務上の取扱いについて今一度確認しておきましょう。