消費税還付の仁義なき戦い ③ その他の改正

posted by 2020.10.28

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 賃貸マンションやハイツでは消費税が還付できなくなるというのが大きな改正点ですが、それ以外にも何点か消費税が改正されています。
元々は作為的な消費税還付を防ぐ改正であっても、租税回避を意図していない普通の人まで制限に引っかかる内容も含まれているので注意が必要です。

 

1.非課税家賃の明確化

≪改正
 非課税となる住宅の貸付け「契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限る」とされていました。
裏を返せば、明らかでないものは”課税”になり、前回解説したような還付を受ける際には有利に働きます。

≪改正
 基準を明らかにするために非課税の範囲が限定されました。
契約で用途が明らかでない場合でも、貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合は非課税に含まれることになりました。
例えば個人が契約していて、家主さんの方でも特に事業用と認識していなければ契約書で用途を明記していなくても”非課税”となります。

 

2.高額特定資産の範囲拡大

≪改正
 高額特定資産を取得した場合にその後2年は免税や簡易を選べない特例が平成28年に導入されています。
これは初年度に高額な資産購入により消費税還付を受けて、その後すぐに免税や簡易課税にして、3年平均の調整を免れるスキームを防ぐために作られた制度です。

※高額固定資産とは
 棚卸資産及び調整対象固定資産のうち、一取引単位につき税抜1000万円以上のものを言います。

※調整対象固定資産とは
 建物、構築物、機械、車両、器具等のうち、一取引単位につき税抜100万円以上のものを言います。

≪改正
 不動産業者や建築業者における棚卸資産に関して、免税から課税になった事業年度は過去の仕入れ分に関しても消費税を控除できますが、この部分も高額固定資産に該当するものとして、免税や簡易課税になることが制限されました。

 

 改正自体は棚卸資産に関する部分を厳密にしたという内容ですが、元の制度を少し補足しておきます。
建物を建築して還付を受けた場合に、その後2年は免税事業者になれず、簡易の選択届の提出も制限される、というものですが、これは還付を受けた場合に限りません。

 例えば会社設立時に高額な機械を導入(原則課税で消費税控除)したものの売上げが軌道に乗らず、売上げが1000万円に満たなかったとしても2年後には免税にはなりません。
あるいは1000万円以上の高級車を買った場合(原則課税で消費税控除)にも、その後2年は簡易課税選択届出書の提出が制限されます。たとえ基準期間の課税売上高が5000万円以下で簡易課税を選んだ方が有利であっても新たに選択することはできません。
なお、以前に提出した簡易課税選択届出書が生きている場合は簡易課税を使えますが、ここまで来ると偶然の要素が大きいです。

 

 ちょっとややこしい話になりましたが、作為的な消費税還付をしていなくても、高額な資産を買って消費税を原則課税で控除していれば、免税や簡易課税に規制がかかるので注意しましょう。
はっきり言って『とばっちり』ですが致し方ありません。