消費税還付の仁義なき戦い ② 居住用の還付禁止

posted by 2020.10.27

chirashi_mansion

 前回の続きで租税回避的な消費税還付を防ぐための改正について見ていきます。

 居住用の賃貸マンション等を建てて還付を受けた場合、3年後に平均の課税売上割合を使って調整が入ります。
普通であれば非課税売上げである家賃が増えて、すでに還付を受けた消費税を3年後に一部納付することになるんですが、金売買を繰り返して課税売上げを増やして課税売上割合を下げないスキームが横行しました。

 そこで居住用賃貸マンション等を建てた(買った)場合には、そもそも消費税の還付が受けられないよう改正されました。
いくら防いでも抜け道を作られるので根元から絶ったという印象です。

 

<規制される課税仕入れ>
・令和2年10月1日以後の引渡分(ただし令和2年3月31日までの契約分は対象外)
・原則課税で消費税を控除
・税抜1000万円以上の建物(附属設備含む)
・居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物)

 

<居住用賃貸建物とは>
 全館テナントビルで居住用が全くないなど明らかに”住宅の貸付け”でないものは従来と変わらず消費税が控除できますが、それ以外は広く制限されます。

≪セーフ≫
・全てが店舗、事務所、ホテルなどの事業用
・居住用にしないことが明らかな販売用建物

≪アウト≫
・居住用マンションやハイツなど
・用途が未定のもの

≪一部セーフ≫
・1階店舗、2階以上マンションで、床面積や建築原価などにより合理的に区分すれば店舗対応分は控除可

 

<転用した場合の調整>
 居住用マンションを購入して、リノベしてホテルに変えるようなこともありますが、買った時点が居住用マンションであることにより全く消費税が控除できないのは酷な面があります。
そこで3年以内に用途変更や売買をした場合には、課税売上割合の平均を取って追加的に消費税を控除できる手当てがされました。

・建築(購入)年度を含めて3事業年度までが調整期間
・居住用賃貸建物に係る消費税額に下記の割合を掛けた金額を第3事業年度の課税仕入れに係る消費税額に加算

≪課税賃貸割合≫(事務所用などに転用)

 調整期間の課税家賃/調整期間の家賃総額

≪課税譲渡等割合≫(売却)

(売却日までの課税家賃+売却額)/(売却日までの家賃総額+売却額)

 

 建物の売買は常に「課税売上げ」であるため、分母にも分子にも含まれます。
なお、この調整措置は3年以内の転用や売買を対象としているので、4年目以降の場合は特に調整はなく、追加的な消費税控除をすることはできません。

 

 今回の改正に関連して他にも改正点があります。
租税回避的な還付を防ぐのが目的ですが、それを意図せずに普通に商売していても制限に引っかかることがあるので、その注意点を次回見ていきます。