消費税還付の仁義なき戦い ① 自販機と金売買

posted by 2020.10.26

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 今年の10月から賃貸マンションを建てた場合に消費税の還付が受けられなくなっています。

 消費税は、事業者が「受け取った消費税」から「支払った消費税」を差し引いて払う税金です。
建物の建築時など多額の資産を購入した場合には「支払った消費税」の方が多くなり、国から還付を受けることができます。
ただし、賃貸住宅のように非課税の売上げしかない場合には、受け取る消費税がなく、今後も消費税を国に支払うこともないことから、建築時に「支払った消費税」の還付を受けることができません。

 この消費税を何とか還付したいということで次のような方法が取られ、国税庁も何とかそれを防ぎたいという攻防が今までにありました。

 

1.自動販売機スキーム

<概要>
 課税売上げの割合が100%である会社を作ってしまえば、たとえ居住用建物に係る消費税であっても全額控除することができます。

① 新しく会社を設立
自動販売機設置(課税売上げ発生。例えば1か月10万円)
マンション建築(建築時の消費税発生。2億円なら消費税2000万円)
家賃が発生する前に決算(完成直後に決算期設定、フリーレント期間を設けるなど)
⑤ 消費税申告(10-2000=1990万円の還付)

 本来なら居住用なので全く消費税の還付を受けられないはずが、1990万円の還付を受けられることになります。

 ただし、消費税には課税売上割合の変動が大きい場合には3年平均で計算する方法があります。
3年後には家賃収入がほとんどであり、再計算すれば還付額は大幅に減るはずですが、3年目の時点で免税事業者を選んでおけば、それも回避することができます。

 

<改正>
 還付を受けることは阻止できないため。3年目の平均の調整に引きずり込む方向で改正されました。

① 3年間は課税事業者選択取りやめ不可

 課税事業者をやめて免税になれないよう3年縛りのルールができましたが、今度は会社を作って2年間休眠させて、3年目に購入して回避する人が現れました。

② 3年間は免税事業者不可

 ①を厳密に行うため、課税事業者が1000万円以上の高額資産を取得して控除を受けた場合には、3年間は免税事業者になれないよう改正されました。

 

2.金売買スキーム

<概要>
 1で3年目に免税にできなくなったため、今度は課税売上げを作り出して、課税売上割合の3年平均を底上げする方法が考え出されます。
とは言え、売上げなんて簡単に作れるものではないので、会社で投資商品である金を買いまくります。
短期間に売買を繰り返せば、変動がさほど大きくない金で損することはありませんし、「課税売上げ≒課税仕入れ」になるため、金の売買で払う消費税も増えません。

 

<改正>
 いたちごっこに業を煮やした国税庁は、課税事業者の選択取りやめとか3年目の調整対象固定資産といったまどろっこしいことは諦めて、そもそも賃貸マンションでは還付が受けられないよう改正してしまいました。

 

(つづく)