賃貸借契約の解除と税金

posted by 2020.09.9

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 コロナの影響やテレワークの普及など経営環境の変化により、賃貸借契約を解除するケースも出てきています。
賃貸借契約の解除に伴って発生する収益や費用に関しての税務上の取扱いを(主に貸主の立場で)確認します。

 

① 原状回復費

<法人税・所得税>
 借主に原状回復義務がある場合は、貸主は預った敷金から原状回復費の見積額を控除して返還します。
この原状回復費は『雑収入』として課税対象となります。
同じ期に現状回復工事を実施した場合は、経費も計上されるので収益と相殺されます。

<消費税>
 貸主が借主に代わって原状回復の手続きをしているので、貸主から借主への『サービスの提供』にあたり、消費税の課税対象になります。

 

② 敷引(礼金)

<法人税・所得税>
 契約期間に応じて敷金の返還額が変わることがあります。
例えば、保証金が100万円、解約時期が3年未満で70%引き、10年未満で50%引き、10年以上で20%引きといった内容です。
この場合、契約時には引くことが確実な20%部分を収益計上します。

 その後、この契約が3年未満で解約された場合は70%引きなので、貸主は当初の20%との差額である50万円を追加で収益計上します。

 一方、借主については、当初の敷引額を『繰延資産』と処理し、契約期間(または5年)で償却して経費化します。
早期解約で追加的に引かれる分は、解約に伴う一時の損失なので『繰延資産』ではなく『雑損失』になります。

<消費税>
 住居など非課税物件であれば敷引部分も非課税、テナントなどの課税物件であれば敷引部分も課税になります。

③ 違約金

<法人税・所得税>
 解約の条件として「3か月前予告または3か月分を一括で払えば即解約できる」というような内容の契約もあります。
この場合、一括で払った3か月分は違約金にあたり、貸主は収益として課税されます。

<消費税>
 違約金として損害賠償の性格があり、使用に伴う支払ではないので消費税は不課税です。

 

④ 割増賃料

<法人税・所得税>
 解約時の明け渡し遅延により、割増賃料が追加で発生することがあります。
これも家賃の一種であり、貸主では収益として課税されます。

<消費税>
 ③の違約金と異なり、使用の実体があるので消費税は課税となります(居住用であれば非課税)。

 消費税の取扱いが物件の用途や発生の状況によって変わるので、契約上の用途や対価性の有無に着目して処理するようにしましょう。