出向と税金

posted by 2020.08.17

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 ドラマで”出向”という言葉が飛び交っていたので、出向と税金の関係について取り上げてみます(もう本社に戻ってますが…)。

 

 ”出向”を一言でいうと「元の会社に籍を残したまま、他社に出向いて仕事すること」を言います。
似た形態として”転籍””派遣”があります。
”転籍”「元の会社を退職して他社に移籍すること」を言い、どこに籍を置いているかで見分けます。
”派遣”「元の会社に雇用された状態で他社の指揮命令を受けて働くこと」を言い、雇用契約がどことの間にあるかで見分けます。

 

 出向に関する税務的な論点として出向者給与の負担の問題があります。
出向先で仕事をしている以上、社会保険料の会社負担分も含めて全額出向先が負担するのが原則です。
給料の振り込みに関して、出向元から引き続き支払われるケースと出向先から直接支払われる場合とがありますが、いずれにしても労務の提供を受けた出向先が全額負担するのが原則です。

 払うべき出向負担金をを支払っていない場合には、出向元から出向先への利益供与があったものとして寄附金として課税されることになるので注意が必要です。
ただし、出向元と出向先で給与水準に差がある場合には全額負担していなくても寄附金とはされません。
例えば、東京中央銀行で年収1500万円もらっている状態で、東京セントラル証券に出向しているとします。
出向先の東京セントラル証券の給与規定で年収1000万円になると本人の給料が500万円減ってしまうので差額は出向元である東京中央銀行が負担することになります。
この格差補填金については、給与水準の差以外に出向先が経営不振で賞与を出せない場合にも合理性が認められます。

 

 税務上でもう1点注意が必要なのは、出向元では部長だった人が出向先で役員になっているようなケースです。

 出向先で役員である以上、それなりの規制を受けることになります。
まず役員報酬の金額に関して株主総会や取締役会で決議を取る必要があります。
また役員は定期同額給与でないと経費にならないので、変更は原則として決算後3か月以内しか出来ず、賞与の支給もできません。
賞与に関しては金額が決まっていれば事前確定届出給与として届出を出しておけば、負担した出向先においても経費にすることができます。
実務的には賞与も含めて出向元の年収を出してそれを12で割る方が手続きとしてはシンプルです。

 

 出向に関しては、上記以外にも退職金の問題や出向元の仕事も週1回はしているのでその分は出向元が負担するケースなど会社によって千差万別で様々な論点があります。
手続きと費用負担の両面からチェックして寄附金など想定外の税金が発生しないように気をつけましょう。