年金改革法(公的年金編)

posted by 2020.06.18

nenkin_techou_obaasan

 コロナ関連の政策や法案に目が行きがちですが、そんな中5月末に年金改革法が成立しています。
この法案は年金制度を持続可能なものにすること、働き方の変化に応じて年金制度を変えていくことが目的です。
5年程度かけて段階的に施行されていきますが、方向性を理解する意味で主な内容を解説します。

 年金には公的年金私的年金とがありますが、まずは公的年金について見ていきます。

 

1.社会保険の適用拡大

① 現行制度

・中小企業は週30時間以上勤務で加入義務あり。

・従業員501人以上の会社は週20時間以上勤務で加入義務あり。

② 2022年10月~

・従業員101人以上の会社で週20時間以上勤務で加入義務あり。

③ 2024年10月~

・従業員51人以上の会社で週20時間以上勤務で加入義務あり。

 

2.在職老齢年金の緩和(働きながら年金をもらいやすく)

① 現行制度

・65歳未満:給料+年金>28万円⇒年金全額もらえず

・65歳以降:給料+年金>47万円⇒年金全額もらえず

※正確には”給料”=標準報酬月額+標準賞与額÷12、”年金”=老齢厚生年金の基本月額。

※28万円や47万円といった減額基準を超えると年金がいきなりなくなるわけではなく段階的に支給停止になります。

※基礎年金は給料にかかわらず全額受け取れます。

② 2022年4月~

・65歳未満の減額基準を47万円に緩和

 

3.在職定時改定の導入

① 現行制度

・65歳以降に厚生年金に加入しながら働いても年金はすぐには増えず、70歳時点でまとめて増額。

② 2022年4月~

・年に1回、10月分から増額されるので、働くことで年金が増えることが実感できる。

 

4.繰り上げ受給と繰り下げ受給

① 現行制度

・繰り下げは70歳まで。増額率は月0.7%

・繰り上げは60歳から。減額率は月0.5%

② 2022年4月~

・繰り下げは75歳まで可能。増額率は月0.7%で変わらず。

・繰り上げの60歳からは変わらず、減額率は月0.4%に縮小。

※70歳まで繰り下げると42%、75歳まで繰り下げると84%増加。元を取るにはもらい始めてから12年必要。

※60歳からに繰り上げると月0.5%なら30%減少、改正後の月0.4%なら24%減少。普通に65歳からもらうケースに逆転されるのは約21年後。

 

 これらは非正規の短時間労働者の増加や働く高齢者の増加など働き方の多様化に応じた改革と言えます。

次回は私的年金について見ていきます。