離婚と自宅財産分与

posted by 2020.06.9

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 コロナによる外出自粛で家族と過ごす時間が増えたというポジティブな変化がある一方、コロナがきっかけで離婚を考えるようになった、なりそうという人が3割以上いるという恐ろしいニュースが出ていました。

 煽るわけではありませんが、離婚による財産分与の税制について確認しておきます。

 

<贈与税>
 財産分与は婚姻中に共同で築いた財産の清算であるため、贈与に該当せず贈与税は課税されません。

 

<所得税>
 贈与税はかかりませんが、不動産を財産分与した場合には「渡した側」に譲渡所得税がかかります。
これは不動産の名義の移転を「財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする不動産の譲渡」と考えるためです。
財産分与の時点で一旦売却して、売却で得たお金を財産分与で支払ったという理屈で含み益に課税されます。

 渡した側は1円も受け取っていないのに譲渡所得税がかかるという厳しい状況になりますが、自宅の財産分与である場合には「居住用財産を譲渡した場合の3000万円控除」の適用が受けられます。
3000万円控除は身内に対する売却には適用がありませんが、離婚が成立して他人になっていれば適用があります。

 

<譲渡所得税の計算>

① 住宅ローンなし

 譲渡所得:財産分与時の時価※1-取得費※23000(万円)

※1
 不動産の時価は類似物件の売却情報や広告、不動産業者の査定額、相続税評価額や固定資産税評価額からの逆算などの方法で算定します。

※2
 建物については減価償却費分目減りしているので単純に購入額を引くわけではありません。

 

② 住宅ローンあり(ローン引継ぎ)

例:時価2500万円、ローン残高800万円、取得費2000万円

譲渡所得:(2500ー800)+800-2000ー3000(万円)

 財産分与自体はローン残高控除後の正味1700万円ですが、ローンがなくなることも利益になるので合計2500万円(=時価)となり、①と同じ結果になります。

 なお、もらった側が新たにローンを借りて、旧ローンを一括返済することがあります。この場合、中古住宅の要件を満たせば住宅ローン控除の適用を受けることができます。

 

<不動産取得税等>
 不動産を移転した場合には原則として不動産取得税(住宅及び土地は3%)がかかりますが、その財産分与が実質的に夫婦の共有財産の分割であり、婚姻中の財産関係を清算するものであれば非課税となります。

 名義変更の登記の際の登録免許税については、通常の中古住宅の売却と同様に「固定資産税評価額×2%」が課税されます。

 

 ただでさえややこしい離婚時に、ややこしい税金のことを考えるのはしんどいですが予想外の課税がないよう各種税金への影響を想定しておきましょう。