債務控除できない人

posted by 2020.01.16

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 相続税を計算する場合には、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて純額を出していきます。
マイナスの財産というのは借金などの債務と葬式費用です。

 どういったものが控除できるかというのは以前にも取り上げたことがありますが、もう1つ論点として「誰が」控除できるかという点もあります。

 

 控除できる人の要件は次の通りです。

・「財産を取得した時に日本国内に住所がある人」または「日本国籍があり、10年以内に日本国内に住所があった人」等

相続人または包括受遺者であること

 

 ”包括受遺者”というのは、どの財産というのを特定せずに「全体の何分の1」という形で遺言で財産をもらった人を言います。
全体で見るのでプラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。
つまり民法上の”相続人”と同レベルの状態なので債務控除の取扱いも同じです。

 これに対して、特定の財産だけもらった人”特定受遺者”と言います。
特定受遺者は遺言に書いていない限り、債務を引き継ぐ義務がありませんので相続税法上も債務控除ができません。

 

 遺言を作成する際に気をつけないといけないのが、借金のある不動産を遺言により(相続人でない)孫にあげるような場合です。
当事者(被相続人や相続人)の感覚としては、財産をもらった人が借金も引き継ぐと普通考えます。
しかし、遺言に借金について書いていないと、借金は民法上は相続人が引き継ぐことになります。
すると不動産は孫借金は子といういびつな状態になります。

 他方、債務の承継に関しては当事者だけでなく貸した側の同意も必要です。
お金を貸した銀行としては不動産を引き継がない子が借金を引き継ぐと返済できるか不安なので不動産とセットで孫に引き継いで欲しいと考えます。

 そうなると特定遺贈で孫が不動産を取得し、借金は債権者である銀行の意見により孫がセットで引き継ぐことになります。
形としては自然なのですが、問題は相続税で、孫は相続人でも包括受遺者でもないので債務控除ができず、相続税は大幅に増えてしまいます。

 

 ケースとしてはレアですが、借金を引き継げば必ず債務控除できる、というわけではないので気をつけましょう。