配偶者居住権とは ①民法

posted by 2019.09.18

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 民法相続編の改正の目玉の1つが「配偶者居住権の創設」です。
今までになかった概念だけに、ピンとこない部分があるので掘り下げて解説します。

 

<背景>
 亡くなった方の財産の多くを自宅が占めている場合、配偶者が自宅に住み続けにくい状況にありました。

(例)
・財産は自宅4000万円、預金2000万円
・相続人は配偶者と子ども2人

 法定相続分は配偶者が1/2、子どもが1/4ずつなので、自宅を相続した上で法定相続分通りに分けようとすると子どもに1500万円ずつ渡さなければなりません。
預金は2000万円しかないため、自宅を売らざるを得ないようなことが起きていました。
仮に預金が4000万円あれば支払えますが、自宅しか相続できないと今後の生活費に支障をきたすこともあり得ます。

 そこで自宅を不動産の所有権と居住権に分離して、配偶者に所有権がなくても自宅に住み続けられる権利として「配偶者居住権」が創設されました。
平たく言うと、自宅を”住む権利”と”売る権利等”に分解することで、配偶者の住処を確保しつつ、配偶者の生活のための取り分を増やすことが可能になりました。

 

<民法の規定>
配偶者が相続時に被相続人名義の建物に住んでいれば、無償で使用できる権利が発生。

・遺産分割でも遺贈でもOK

・配偶者居住権は売却することも相続することもできない(配偶者が亡くなると消滅)。

・被相続人が自宅建物を配偶者以外の者と共有していたら配偶者居住権は設定できない。

遺贈の場合、結婚後20年上経っていれば、持ち戻し免除の対象。

 最後の項目を補足しておくと、生前贈与や遺贈があった場合、先にもらったものは遺産分割の際に足し戻して、相続分を計算します。
これを「持ち戻し」と言いますが、結婚後20年以上経っていれば被相続人が特に意思表示しなくても、配偶者居住権は持ち戻し免除の対象となります。
すなわち、配偶者居住権以外の財産だけで相続分を計算できるので、配偶者の生活のための資金が確保しやすくなります。

 

<いつから>
・2020年(令和2年)4月1日以後の相続や遺言から

 

 相続税を計算する上での評価については次回に続きます。