代表取締役とCEO ② 税務

posted by 2019.09.13

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 前回の続きで税務における役員の違いについて見ていきます。

④ 税務

 税務で重視されるのは形式よりも実態です。
従事状況、影響力などにより取扱いが変わってきます。

<従事状況による違い>
 役員としての仕事は雇用ではなく委任であるため、朝から夕方まで会社に詰めていないといけないというものではありません。
そのため、他の仕事をしている場合や数社の役員を兼務する場合もあります。
例えば週1回だけ来る、月1回の役員会にだけ来るというような「非常勤役員」はその会社にメインで取り組む「常勤役員」とは取扱いが変わってきます。

 税務上争点になるのは非常勤役員の役員報酬が妥当かどうかという点です。
社内的には有形無形の貢献、これまでの実績など様々な事情を考慮して役員報酬を決めますが、税務署は他の常勤役員と比べて高すぎないか、実際にどんな仕事をしているのかといった今の状況で判断します。
そのため、勤務や従事の状況、会議への出席、議事録の作成や署名押印などにより説明しやすいよう準備しておくべきでしょう。

 

<影響力による違い>
 法律上の「代表取締役」「取締役」でなくても、税務上役員とみなされる場合があります。

「みなし役員」とは次のような人を言います。

・会長、相談役、顧問などで、社内における地位、職務等からみて他の役員と同様に実質的に経営に従事している。

・同族会社の従業員で、大株主グループに属し、本人も5%超の株を所有し、経営に従事している。

 さらに従来は従業員扱いとされていた「執行役員」も経営において重要な役割を果たす場合には、税務上も「みなし役員」とされるケースもあるようです。

 

<中間的な取扱い>
 法律上の役員である「取締役」として経営に従事しながら、現場の責任者も兼務しているケースがあります。
税務上は”役員のうち,部長・課長などといった使用人としての職制上の地位を有し、常時使用人としての職務に従事するもの”「使用人兼務役員」として取扱い、役員と従業員の両方の扱いを認めています。
肩書としては「取締役営業部長」「取締役工場長」といったものが該当し、「社長」「副社長」「CEO」「COO」などは従業員としての地位がないため、該当しません。

 使用人兼務役員の給料については従業員分と役員分に分けて決定され、従業員としての働きには賞与として支給することも可能です。
賞与を出せる点以外では、従業員部分は変動させられる(役員報酬としての定期同額給与の縛りを受けない)点や従業員部分に関して雇用保険に加入できる点が通常の役員とは異なります。

 注意点としては、使用人兼務役員であることを分かりやすくするため、給与明細で役員分と従業員を明確に区分する、役員報酬については他の役員と同様に取締役会等で定める、兼務役員と分かりやすい肩書にするといった形式面も整備しておくべきでしょう。
実質面では、従業員としての業務を説明できるようにしておく、賞与の水準を他の従業員と乖離しないようにするといった点に留意したいところです。

 なお2つ目で説明した「みなし役員」に該当する人は「使用人兼務役員」になることはできません。これは影響力があるという実態に着目し、従業員部分がないと考えられるためです。

 

 税務は実質に着目する分、取扱いは複雑ですが、使用人兼務役員執行役員をうまく使えば、通常の役員よりも柔軟性を持たせることもできます。