払った相続税のその後

posted by 2019.08.26

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 前回は意外と知らない「相続税の払い方」を確認しましたが、その続きで「払った相続税のその後」について見ていきます。

と言っても税金がどう使われるかという話ではなく、払った相続税が違った形で取り返せるという話です。

 

① 財産を売却した場合

 不動産や株式など譲渡所得の対象となる資産を売却した場合に、払った相続税を経費として引ける「相続税の取得費加算」という制度があります。
相続税を納めるために、相続した財産を売却することも往々にしてあるので、そこにさらに税金を掛けると相続税の納付に差し支える、という理由で税が軽減されるというものです。税金そのものが経費になるというある意味珍しい特例です。

 具体的には次の算式で計算した金額を取得費として売却益から控除できます。

★その者の相続税額×(売却財産の相続税評価額/その者の相続税の課税価格+債務控除額)

 ちょっと分かりにくいですが、払った相続税のうち、売った財産に対応する部分を人別に引っ張り出しています。

 要件として、相続税の申告期限から3年以内(亡くなってからだと3年10か月以内)の売却となっているので、どうせ売却するのであれば3年10か月以内というのを意識してもらった方がいいでしょう。

 なお払った相続税がなければ取得費加算により増える経費はありません。

 

② 相続が続いた場合

 相続が立て続けに起こった場合には税負担が重いことから、前回相続で払った相続税の一部を税額控除できる「相次相続控除」という制度があります。

 ちょっと分かりづらいので具体例に当てはめながら説明します。
父、母の順に亡くなり、子どもは息子と娘がいるとして、息子の控除額を計算します。

<要件>
・息子が母の相続人であること(放棄していない)。
・父死亡から母死亡までが10年以内
・父相続時に母が相続税を払っていること

<控除額>

★A×C/(B-A)×D/C×(10-E)/10

※割合は100%が上限

:父相続時に母が払った相続税
:母が父相続時に取得した純資産価額
:息子と娘が母相続時に取得した純資産価額合計
:息子が母相続時に取得した純資産価額
:父死亡から母死亡までの年数(1年未満切捨て)

 極端な例で言うと、父の全財産を母が相続して、1年以内に増減のないまま母が死亡して、息子がすべて相続した場合には、母が払った相続税の全額を控除できます。

 

 いざ相続が起こると目の前の手続きで必死になり、終わった相続のことは忘れがちです。
控除額としてはどちらも小さくないので適用もれのないように注意しましょう。