前回の続きで生計一親族の相続税への影響を見ていきます。
どこに関係してくるかというと「小規模宅地等の特例」です。
小規模宅地等の特例は亡くなった方の事業や居住に使われていた土地の評価を50%または80%減額する特例です。
制度の趣旨としては、引き継いだ方がそのまま住み続けられるように、あるいはそのまま事業を続けられるように、という観点で相続税を軽減するものです。
小規模宅地等の特例は亡くなった方が使っていた土地だけでなく、生計一親族の事業や居住に使われていた土地に関しても適用があります。
<要件>
・生計一親族が相続
・申告期限まで保有
・申告期限までに事業または居住の用に供している
なお、居住用宅地を配偶者が相続した場合は、保有と居住継続の要件はありません。
この特例における”生計一”は相続税に特に定めがないので所得税と同様と考えられてきました。
<所得税での生計一>
・同居なら基本的に該当(それぞれ収入あっても生活費を共有していればOK)
・別居でも仕送りしている場合や余暇に帰省している場合は該当
ところが昨年の東京高裁では違う判断が出ました。
単に財布が同じというだけではなく、生計一親族の事業が被相続人の生計を支えていることが必要という要件も追加されました。
どういう理屈かというと、単に生計一親族に使われているだけなら生前に被相続人が売ることも可能で担税力は十分ある。
そのため制度の趣旨から考えると軽減の必要性がない、というものでした。
<裁判における認定事実>
・被相続人の食費や光熱費は本人口座から支払われている。
・被相続人と生計一親族との間でお金の入出金がない。
・相続人は事業(大工)で相応の収入があり、被相続人から経済的援助を受けていたことがうかがわれない。
・同居していない。
・相続人は被相続人を扶養親族として確定申告していない。
この事例は”生計一”の度合いがやや弱いところも気になりますが、明文化されていない要件が追加されたことについて相続人も納得できないため、最高裁に上告されています。
今後の取扱いにも影響するだけに裁判の行方が注目されます。