映画にもなった国税局査察部、通称『マルサ』
令和2年度における活動状況が国税庁HPにて公表されていたのでご紹介します。
1.処理件数113件、うち告発件数83件(73.5%)
着手件数、処理件数、告発件数ともコロナの影響で3割前後減少し、告発件数は51年ぶりに100件を下回っています。
その分吟味して調査先を選定しているようで告発率は73.5%と高くなっています。
2.一件当たり脱税額 8300万円
近年減少傾向にありましたが、調査先を厳選した分一件当たりの脱税額は増加しています。
告発の目安となる脱税額は1億円ですが、悪質であれば金額に関係なく告発されます。
総額は69億円で過去最少となっています。
3.税目ごとの特徴
告発された83件の内訳は法人税55件、消費税18件、所得税8件、源泉所得税2件でした。
消費税については国民感情も考慮して”不正還付”に重点的に取り組まれています。
法人税については”無申告”や”国際事案”が従来から継続して重点事案として取り扱われています。
その他では、貧困ビジネスや外国人向けのリゾートに絡む不動産事業など社会的に注目度が高く、多額の利益が計上されている事案にも取り組まれています。
4.業種の特徴
告発件数が多いのは①不動産業、②建設業、③クラブ・バー、で上位の顔ぶれはあまり変化がありません。
景気のいい業界が上位に来る傾向があります。
コロナ前の年度の調査が多いので、クラブ・バーも上位に入っています。
5.脱税の手口
<法人税・消費税>
・脱税指南コンサル会社が多額の報酬があったにも関わらず法人税及び消費税の申告を全くせず。前年に脱税指南を受けていた顧問先も告発されており、芋づる式に発覚。
<消費税>
・アフリカへの自動車輸出を手掛ける在留外国人が、過大な輸出売上げと国内仕入れを計上して消費税を不正還付。保留されていた還付額についても未遂犯として告発。
<法人税>
・宝飾品製造会社が香港法人に対する架空の材料費を計上し、売上げについても香港に送金することで除外。
<法人税>
・ネットカフェ難民等の生活困窮者に宿泊施設を提供し、生活保護費から家賃収入を得ていた事業者が現金売上げを除外。
<法人税>
・ニセコで外国法人向けに不動産を販売する事業者が借名で取引きをして売上げを除外し、経費についても虚偽の請求書を作成して法人税を脱税。
脱税の手口については多少目先は変われども売上除外と架空経費というのは昔から変わりません。
コロナで調査がしづらかったことや取引の複雑化もあって、警察や金融機関からのデータもフル活用して調査が進められているようです。
告発後、一審判決が出た87件のうち86件が有罪でうち6件は実刑判決です。
くれぐれも魔が刺すことのないようにしましょう。