相続法改正の影響 Ⅰ 配偶者居住権の新設

posted by 2019.01.24

sedai_dankai

 相続法改正の1つ目は「配偶者居住権の新設」です。

 

Ⅰ 配偶者居住権の新設(2020.4.1~)

① 目的

 従来の民法では配偶者が被相続人の死後、自宅に住み続けにくい状況にありました。子ども2人の夫婦で夫が亡くなった例で見ていきます。

<例1:財産は自宅3000万円、預金3000万円>

配偶者の相続分は1/2なのでこれまで住んできた自宅を相続すると預金の取り分は0で今後の生活に支障を来たす可能性があります。
かと言って自宅を子どもに相続させて仲が悪くなったりすると追い出される心配もあります。

<例2:財産は自宅3000万円、預金1000万円>

配偶者が自宅を相続すると1/2を超えるので、1000万円自腹を切って子どもに1000万円ずつ払う必要があります。場合によって自宅を手放さないといけないかも知れません。

 

 そこで自宅を「配偶者居住権」と「所有権」に分離して相続できるようにします。例1の場合、配偶者居住権が300万円として、自宅2700万円を子どもが相続すれば、配偶者の枠がまだ2700万円あるので預金の分割も受けることができます。

 

② 配偶者居住権の内容
・特に期間を定めない限り、生涯自宅に住めます。
・自宅名義に関係なく居住建物の全体に及びます。
登記が必要

 

③ 税金
配偶者居住権の評価方法

 建物時価-建物時価✕(残存耐用年数-存続年数)✕存続の複利現価率
              残存耐用年数

 ややこしいですが式の意味としては、まず建物の耐用年数と妻の平均余命から権利が何年残っているか計算します。それが20年だとすると20年後の建物の価値から現在価値を逆算して、時価との差額が配偶者居住権となります。詳細は今後通達で発表されるのでその際に解説します。

建物の評価額は配偶者居住権を引いた残りとなり、土地についても連動して利用権が発生します。

・相続の仕方によっては従来より節税になります。
 先の例で妻が配偶者居住権300万円、子どもが自宅2700万円を相続するとします。従来なら3000万円に対する相続税を払って移転していた自宅が配偶者居住権分低い時価で移転できています。妻の死亡後は配偶者居住権は消滅して時価は3000万円に戻ります。

・逆に相続税が増えるケースもあります。妻が配偶者居住権を相続し、自宅を相続した子どもが別居していたとすると小規模宅地の評価減(▲80%)を受けることができません。

 

 施行されるのがまだ1年以上先なので詳細は決まるのはこれからですが、遺産分割、その後の生活、税金などを総合的に考えて判断していく点は従来と変わらないと言えます。