相続法改正の影響 Ⅱ 配偶者への自宅贈与

posted by 2019.01.25

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 相続税改正の2つ目は昨日に続いて配偶者絡みです。

 

Ⅱ 配偶者への自宅贈与の持ち戻し免除(2019.7.1~)

① 目的

 従来は生前に配偶者に自宅を贈与していても、遺産分割の際には特別受益として持ち戻して計算していました。
「先に贈与でもらってるのだから相続時には少しでいいでしょ」ということで、預金などの財産を全くもらえないこともありました。
そうなると自宅はあっても生活に支障を来たすことになるため、一定要件を満たす自宅贈与があった場合には、特に意思表示がなくても相続時に持ち戻して再計算しなくてよくなります。

 

② 対象となる贈与

 従来から、婚姻期間20年以上の配偶者に自宅を贈与した場合に2000万円まで非課税とする贈与税の特例がありました。
いわゆる「おしどり贈与」と呼ばれるものです。
この特例の趣旨は、自宅は夫婦の協力によって取得できたものであり、その貢献に対する感謝や配偶者の老後の生活保障を考慮したものであるとされています。
その意味では持ち戻し免除の意思表示があったと推定してもそう不自然ではない状況であるため、配偶者への自宅贈与分については遺産分割の対象から外すことができて、より多くの生活資金を確保する相続ができるようになります。

 

③ 税金

 通常とは逆で、税金を軽減する2000万円贈与制度が先にあり、その要件を満たすような贈与に民法上の手当てがされています。
したがって税務上の特例に関しては特に改正はありません

 制度のおさらいをしておきます。

<要件>
① 婚姻期間が20年経過(同じ配偶者からは一生に一度)

② 自宅又は自宅を取得するための金銭の贈与(これから買う分もOK)

③ 贈与の翌年3/15までに②の自宅に住んでいて引き続き住む見込み

 

<メリット>
・一度に多くの財産を贈与できます(2000+110万円まで非課税)

相続税の3年以内加算がありません(税務上も持ち戻しなし)

 

<注意点>
・贈与税がかからない場合でも取得税や登録免許税、登記費用など諸費用はそこそこかかります。

・贈与しなかったとしても相続時の特例(小規模宅地の評価減・配偶者の軽減)が手厚いため、この贈与自体に直接的な相続税の節税効果があるわけではありません。

 

 贈与税の特例に民法の方が寄せてくるという珍しい例です。
2000万円贈与は元々デメリットが少なく、よく行われてきましたが、それが相続法の改正でよりやりやすくなったと言えます。