非上場株式の値段について第2回から第7回まで相続や贈与の際の評価額という観点で見てきました。
では売買の場合の”適正額”はどう考えればいいのでしょうか。
基本的には双方が合意すればいくらでもいいはずですが、同族会社の場合はあえて高く売ったり、逆に低く売ったりするケースが考えられます。
そこで税務上は法律ではなく通達レベルで指針が示されています。
<法人税基本通達9-1-13>
① 売買実例あり:6ヶ月以内売買の適正な価額
② 公開途上 :公募価格を参酌した価額
③ 類似法人あり:類似法人の時価に比準して推定した価額
④ ①~③以外 :純資産価額を参酌した価額
<法人税基本通達9-1-14>(④の詳細)
Ⅰ 中心的同族株主(本人、配偶者、直系血族、兄弟姉妹、1親等の親族で25%以上保有)が売る場合は常に『小会社』として評価。
Ⅱ 土地や上場株式は時価評価。
Ⅲ 純資産価額の計算上、含み益への法人税を控除しない。
ちょっとややこしいので補足します。
Ⅰ 常に小会社
大株主が売る場合は「経営支配権」の部分を重視して、上場企業とのブレンド割合を下げて『小会社』として評価します。
式としては「類似×50%+純資産×50%」ですが、純資産の方が低ければ純資産価額になります。
Ⅱ 時価評価
相続税による評価に修正を加えて時価を厳密にしています。
相続税の財産評価では評価の安全性を考えてやや低めにしていますが、売買を前提とする以上、変動の多い土地や上場株式は取引上の時価によるものとされています。
ただし実務上は「取引上の時価」を明確に算定するのは難しいので「相続税評価額」をベースに計算していてもあまり問題になりません。
Ⅲ 法人税を控除しない
相続税の財産評価で含み益への法人税を控除するのはその時点で解散したものとして時価を計算しているためです。
売買の場合は解散前提ではないので法人税相当額は控除しません。
そのため評価額は相続評価より高めに出ます。
<ポイント>
・相続税の時価と売買の時価は微妙に違う。
・第3者間での売買や株主に証券会社など他人がいる場合などは恣意性が低いので必ずしも通達による評価である必要はない。
・通達は税務署の内部文書。参考にはするものの絶対ではない。