意外と知らない遺留分 ④生前贈与と特別受益

posted by 2017.07.12

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 遺留分の最終回は生前贈与特別受益を見ていきます。

相続人に保証された最低限の取り分が遺留分ですが、亡くなった時点の財産を基準に考えます。その例外が生前贈与特別受益です。

 

<生前贈与>

 亡くなる時点から1年以内の贈与も遺留分算定の基礎となる財産に含めます
先にもらってるんだから一旦なかったことにしようという考え方です。
と言ってももらったことは事実なので本当に返すわけでなく計算上の話です。

 さらに1年以上前の贈与であっても贈与者と受贈者が遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与したものはこれも遺留分算定の基礎となる財産に含まれます
ちょっと分かりにくい表現ですが「この人に多めにあげよう(結果として他の子の遺留分は減るだろうけど)」と思ってした贈与は何年前であろうと足し戻すことになります。
カッコ書きの「他の子の遺留分」まで正確に計算していないとしても結果がそうなっていれば覆すのは難しいです。

 

<特別受益>

 遺言や生前贈与で一定の財産をもらっている場合はその利益を一旦相続財産に足し戻して(持ち戻し)、相続分や遺留分を計算します。
その上で先にもらった分を差し引いて分配します。

 

≪例≫
・夫がすでに死亡、相続人は長男と長女。
・相続時には自宅5000万円と預金1000万円。
・長女は結婚する時に自宅購入資金として2000万円もらっている。

 

① 特別受益を考慮しない場合の長女の遺留分

6000×1/4=1500万円

② 特別受益を考慮する場合の長女の遺留分

(6000+2000)×1/4-2000=0万円

 特別受益を考慮すると、長女は遺留分相当を生前にすでにもらっているため、相続の時点では遺留分減殺請求はできないことになります。

 

 では何が特別受益に含まれるかというと次のようなものです。

・遺贈
・婚姻や養子縁組費用
・大学以上の学費
・住宅購入資金
・事業の開業資金
・多すぎる生命保険金 など

 裁判も多く、各家庭によって何が”特別”かは変わってくるので判断が難しいところですが、いざケンカになった場合は幅広く解釈されると思っておいた方がいいでしょう。

 じゃあ何でもかんでも戻さないとダメなら贈与なんかしてもムダなのかというとそういうわけでありません。
全体のバランスや遺留分を考慮し、遺言を書く場合は付記事項で気持ちを伝えるなどできる限りのことをしておくことが相続後のトラブルをできるだけ小さくすることにつながります。