民法改正されなかったもの

posted by 2017.07.6

teinen_slowlife

 昨日は民法改正を取り上げましたが、今日はあえて改正されなかった内容を取り上げてみます。
中間試案に載っていて世の中のニーズはあるのでいずれは改正されそうな気もしますがいつかは分かりません。

内容としては相続関連です。

 

<配偶者の居住権>

現行民法では相方が亡くなったあとの配偶者の居住権の規定がないので、長年連れ添って一緒に住んでいても相続をきっかけに家を追い出されるようなことが起きています。
そこで遺された配偶者の居住権や生活の保護のために短期居住権(相続後無償で6ヶ月)と長期居住権(一生または数十年で有償)が検討されました。
パブリックコメントでは強すぎる長期居住権が紛争の元となる可能性があるといった反対意見も多かったようで成立しませんでした。

 

<配偶者の相続分の拡大>

現行民法での配偶者の相続分は子どもがいる場合は1/2ですが、貢献度が大きい場合に2/3に引き上げるという内容です。
貢献度は財産増加の程度や婚姻期間の長さで判断する案となっていましたが、引上げの根拠の乏しさなどから成立しませんでした。

 

<配偶者への住宅贈与>

配偶者の生活保障のために結婚20年以上の住宅贈与に関して持ち戻し免除が検討されました。
贈与税においても配偶者の2000万円控除の規定があり、結婚20年以上の夫婦間で行なわれた自宅の贈与については2000万円まで非課税になります。また贈与後3年以内に相続があっても他の贈与財産のように足し戻すこともありません
ただ民法上では持ち戻し免除の意思表示をしない限り、生前に先にもらった財産は遺産分割の際に差し引かれてしまいます
そこで意思表示がない場合もあったものと推定する案となっていましたが成立には至りませんでした。

 

<相続人以外の貢献>

亡くなった方の介護等に貢献した場合は”寄与分”として遺産分割について多少考慮されていましたが、これは対象が相続人のみなので他人である”息子の嫁”にはありませんでした。
そこで相続人に対して金銭的な請求をできる仕組みが検討されましたが、”貢献”を測定する難しさもあり成立しませんでした。

 

<自筆証書遺言の利便性向上>

自筆証書遺言はすべて自署でないといけないなど要件が厳しく無効となる遺言もあったことから利便性を高める案が検討されました。
例えば遺産目録はパソコン作成のものでOKとか、代筆を認めるとか、紛失や隠匿を避けるため遺言を公的機関に預ける制度が検討されましたが成立しませんでした。

 

 配偶者の保護、介護の現実、トラブル防止の観点から検討された内容で必要性は高いように思いますが、相続は家族関係への影響も大きく慎重意見も多かったようで相続の分野はほぼ見送りとなりました。
改正がいつになるかは分かりませんので現行法で可能な遺言や持ち戻し免除、贈与などで対応を検討していくのがベターです。