債権放棄の注意点

posted by 2017.05.17

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 昨日の「役員借入金」のところで役員の相続財産が増加するという影響を紹介しました。
会社への貸付金は相続財産になり、100%評価されて対策しにくい上に換金性が低いという問題点がありました。
確かに対策はしにくいですが方法はあります
その1つが「貸付金を諦める」つまり「債権放棄して0にする」ことですが注意点もあります。

 

① 法人税がかかる

 借入金を免除してもらった会社としてはラッキーなわけですがそれだけの利益を得たことになり法人税がかかります
利益といってもお金が入ってくるわけではないので法人税は払えません。
そのため債権放棄をしてもらう場合は会社にマイナスがある場合、繰越欠損金が残っていて利益を吸収できる時にすることが多いです。
繰越欠損金には9年という期限があるため、期限が切れそうな時に実施されることもあります。

 

② 経済合理性と書類の整備

 債権放棄は貸している人の意思で一方的にできるのでいついくらするかは自由です。
だからと言ってしょっちゅうしたり、小出しにしたりするのは違和感があります。通常お金を貸した人はそんなことはしませんので利益操作と見られる可能性もあります。
そのため、会社がどうしても困っている時とか何年かに1回丸い数字でとかなるべく違和感のない内容でするのがベターです。
また形式的にも「債権放棄の通知書」など書類を整備し、公証役場で確定日付を取っておくとよりいいでしょう。

 

③ 贈与税がかかる

 会社が借入金を免除してもらうと利益になりますが、借金が減って自己資本比率が高まるという貸借対照表上のプラスもあります。
すると株主としては自分の持ち株の価値が上がることになります。
つまり債権放棄をした役員から既存株主への間接的な贈与があったとも言えます。
理論的には贈与ですがもあまり実感もないし、税金を払うだけの実入りもないのですぐ贈与税課税とはなりませんが、影響が大きければ指摘される可能性もあります。

 

 1つの行為が法人税、相続税、贈与税と複合的に影響することがあるので十分検討してから実施するようにしましょう。