税制改正大綱⑰ あとがき

posted by 2016.01.25

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 3週間にわたって連載してきた税制改正大綱もやっと最終回。
本編は前回で終わっているのですが今回は巻末にある「検討事項」を取り上げます。
ここには今回は政治的な理由などから先送りされたけど次回作では盛り込みたい!というような内容が書かれているのでここを読めば今後の方向性が見えてきます。
やたらと「検討」「バランス」「総合的に」という単語が出てきて何を言ってるか分かりづらいのでまとめて言い換えます。

 

1.年金課税

世代間の公平性、他の年金や貯蓄商品、給与課税とのバランスに留意して拠出・運用・給付への課税を総合的に検討。

優遇されている年金課税の強化、拠出の優遇の拡大が考えられます。

 

2.小規模企業

個人事業主、同族会社、サラリーマン、法人成りのバランスを考慮し、所得控除の役割分担を見直しつつ、所得税・法人税を通じて総合的に検討。

個人の法人成りによる節税を制限したい。

 

3.個人事業者の事業承継

事業用宅地の評価8割減について事業用資産の範囲を明確にし、円滑な承継のために見直しを総合的に検討。
また取引相場のない株式の評価について上場会社と配当、利益、純資産とを比較するやり方の適性化を総合的に検討。

⇒個人の事業承継は範囲を狭める方向、法人の事業承継は株価が下がる方向?

 

4.都市農業

生産緑地が賃貸された場合の相続税の納税猶予の適用を検討する。

⇒形だけの納税猶予は実質荒地になるので賃貸した場合も納税猶予を認める方向。

 

5.医療の消費税額控除

医療機関の仕入税額控除の負担、患者負担に配慮し、総合的に検討。

医療機関は非課税売上が多いため消費税の仕入税額控除ができない
 設備投資も大きいし、10%にもなって負担が重いので患者にしわ寄せが行かないよう 消費税を減らす方向。

 

6.酒税の整理

税率格差が商品開発や販売に影響を与え、酒税が減少しているので、類似する酒類の格差の縮小・解消を図る。

発泡酒や第3のビールなど商品開発と法律はいたちごっこの面がある。
 そこでビール類は全部同じ税額にするなどして税の隙間を狙われないようにする。

 

 全体の傾向として財政が厳しい中、庶民や中小企業への課税が強化される方向が読み取れます。