令和6年度税制改正大綱 ⑤賃上げ促進税制

posted by 2023.12.21

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 法人税での目玉と言えるのが「賃上げ促進税制」です。
従来から制度はありますが、改正では大企業、中堅企業、中小企業に分けて内容を強化しています。

 

(1) 法人区分

・大企業 :資本金1億円超、従業員2000人超
・中堅企業:資本金1億円超、従業員2000人以下(新設)
・中小企業:資本金1億円以下(大企業の子会社等を除く)

 

(2) 控除率

① ベースにメリハリ

 大企業と中堅企業では一層の賃上げを促すためにハードルが上がっています。
なお、賃上げ率の判定は継続雇用者の給与で行い、税額控除額は全体の増加額に次の率を掛けて計算します。

<大企業>
・3%賃上げ:15%⇒10%
・4%賃上げ:25%⇒15%
・5%賃上げ:25%⇒20%
・7%賃上げ:25%⇒25%

<中堅企業>
・3%賃上げ:15%⇒10%
・4%賃上げ:25%⇒25%

<中小企業>
・1.5%賃上げ:15%(変更なし)
・2.5%賃上げ:30%(変更なし)

 

② 教育訓練費の上乗せ

<大企業・中堅企業> +5%
・教育訓練費が前年比10%増加(改正前20%)
   かつ
・教育訓練費が給与等支給額の0.05%以上(改正で要件追加)

<中小企業> +10%
・教育訓練費が前年比10%増加(変更なし)

 

③ 子育て支援・女性活躍推進の上乗せ+5%

<厚生労働大臣の認定>
・プラチナくるみん認定    :大、中堅、中小
・プラチナえるぼし認定    :大、中堅、中小
・えるぼし認定(3段階目)  :中堅
・えるぼし認定(2段階目以上):中小
・くるみん認定        :中小

 

(3) 中小企業の繰越し制度

 従来の制度では給料を増やしても赤字であれば恩恵がなかったため、5年の繰越し制度が新設されます。
なお、繰り越した年度でも前年比で少しでも給与等支給額が増えていることが要件となります。

 

(4) マルチステークホルダー要件

 大企業や中堅企業では賃上げや教育訓練などの方針を明確にして、外部に宣言する必要があります。

<改正前>
・資本金10億円以上かつ常時使用従業員が1000人以上

<改正後>
・資本金10億円未満で常時使用従業員が2000人超の法人を追加

 

(5) 適用時期

 令和6年4月1日~令和9年3月31日までに開始する事業年度

 

 改正により最大控除率は大企業と中堅企業で35%、中小企業で45%となり、中小では増やした給料のうち45%が税金で返ってくることになります。

人材確保のためには賃上げは避けて通れない状況であることからしっかり制度を利用していきましょう。