消費税のインボイス制度が始まって約2か月。
始まってみると実務的には様々なことが起こるのでまだまだ問い合わせも多いです。
今回は個人事業者に相続があった場合の対応を確認します。
1.手続き
①「適格請求書発行事業者の死亡届出書」の提出
・誰が:相続人
・いつまでに:速やかに
②「適格請求書発行事業者の登録申請書」の提出
・誰が:事業を引き継ぐ相続人
・いつまでに:できれば4か月以内
なお、相続人がインボイス登録をするかどうかは任意であり、義務ではありません。
2.みなし登録期間
①の②の間のタイムラグを埋めるために、死亡日の翌日から次のいずれか早い日までの期間については相続人がインボイス登録事業者とみなされます。
イ.相続人がインボイス発行事業者の登録を受けた日の前日
ロ.被相続人が死亡した日の翌日から4か月を経過する日
※注意点
・みなし登録期間は長くて4か月なので②の申請を4か月以内に行なえば空白期間を無しにできます。
・みなし登録期間中は被相続人の登録番号でインボイスを発行します。
・相続人がみなし登録期間中に登録申請をして、登録の通知を待っている間はみなし登録期間は延長されます。
・相続人が従前から別の事業をしていて既に登録番号を持っている場合にはすぐにインボイスの発行が可能です。
3.未分割の場合
<例>
不動産賃貸業を行う父が死亡、相続人は兄弟2人
<分割前>
遺産分割協議が成立するまでは不動産を共有していると考えるため、収入も法定相続分で割り振ります。
インボイスに関しては、兄弟2人が上記2の「みなし登録期間」の適用を受けることとなり、インボイスを発行する義務があります。
この場合、登録番号は父のもので同じですが、金額は兄弟で半分ずつ(法定相続分)となります。
<分割後>
遺産分割協議が成立して、例えば兄が全て相続するとなった場合、分割後は父の登録番号で兄がインボイスを発行します。
<登録後>
兄がインボイスの登録申請をして、登録通知があった日以降分は兄の登録番号でインボイスを発行します。
取引先にとって空白期間がないように、という配慮があるため、手続きがやや複雑になっています。