贈与税の実務的な改正

posted by 2023.11.24

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 前回、暦年課税の加算期間延長精算課税の基礎控除創設について見ていきましたが、それ以外に次のような改正もありました。

① 暦年課税の100万円控除

② 被災時に精算課税の加算額を減額

 前回の内容とも関連してくるので合わせて確認しておきます。

 

① 暦年課税の100万円控除

<内容>

 暦年課税の生前贈与加算の期間が改正で3年⇒7年に延びています。
ただ3年前のことなら多少覚えていても7年前のことって忘れていることが多いです。
ちなみに今から7年前の2016年はリオ・オリンピックやトランプ大統領就任があった年です。

 税務署としても細かいことまでは調べきれないので、延長した4年間の贈与については100万円(毎年ではなく4年間の合計)を控除することとしました。

 ちなみに相続税の調査が来るのは申告の2~3年後が多いです。
加算対象の7年と合わせると調査時点では10年前の話になります。
銀行のデータ保存期間が10年なので、7年ぐらいが調べる限界なのかも知れません。

 

<適用>

・令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用

・実際に影響が出るのは令和9年以降

 

② 被災時に精算課税の加算額を減額

<内容>

 相続時精算課税は贈与時で時価が固定されるので、相続時に加算する金額は贈与時の時価となります。
そのため、時価が下がると逆効果になってしまいます。
時価をどう読むかはともかくとして、災害により価値が下落した場合であってもそのまま加算するのはさすがに酷なので改正により減額されることになりました。

・減額幅  :被災により下落した時価分は相続時に加算しない

・災害の種類:震災、風水害、火災、落雷、噴火、鉱害、爆発、害獣等

・被害程度 :土地は贈与時の時価の10%以上、建物は贈与時の時価に耐用年数を考慮して10%以上

・保険金  :災害の被害額から控除

 

<適用>

・令和6年1月1日以降の災害による被害が対象

・災害発生日から3年経過日までに申請書を提出して承認を受ける必要あり

・原状回復費や修繕費の見積書や罹災証明書などを添付

 

 ②は納税者のための改正ですが、①は税務署のためというか実務的な限界を考慮した改正と言えるかも知れません。