個人事業で配偶者や子どもに対して専従者給与を支払っている方も多いと思います。
専従者給与が高額かどうかという点が税務調査で争点になることも多く、国税不服審判所や裁判まで行く例もあります。
今年の8月3日付けの東京高裁判決が出ているので内容を見ていきます。
<基本情報>
・業種:内科開業医(年収1.7~1.9億円)
・専従者給与:1800万円(月100万円+賞与600万円)
・仕事内容 :看護師長兼事務長として看護師業務、会計業務、労務管理、診療時間外の電話対応、在宅医療の送迎など
・従業員給与:約291万円~約470万円
<納税者の主張>
・業務は時間、量ともに膨大で普通の3倍は働いている(時間外勤務が年900万円以上であるメモを提出)
・医療職俸給表のデータを1.5倍(業務兼務)して、管理職手当と時間外手当を合わせれば1800万円を超える。
<裁判所の判断>
・適正な専従者給与は2年は約821万円、1年は約792万円
・適正給与は類似同業者給与比準方式で推計。この方式は業種や業態、場所、規模などが似た同業者の抽出平均と比較している。
・給与が3年で倍以上になった経緯が不明
・従業員にはタイムカードがあるのに専従者にはない。従事時間や業務内容に関する客観的資料がない。
<解説>
・従業員より多い金額とはされたものの1800万円分が妥当であることを証明する証拠資料がなかったことがポイントとなったようです。
・急激に上昇させないこと、タイムカードや日報などで業務内容を証明できるようにしておくことも高額な給与を支給する場合には重要です。
・他の判例では従業員と同程度の業務であれば給与水準も同程度になるという判断もされており、従業員との比較も適正額の判断には必要です。
裁判になると類似同業者給与比準方式で計算されるケースが多いです。
納税者に公開されている情報ではないのでちょっとフェアではない気もしますが、実務上の経験則や判例の情報を元に検討していくしかないのかも知れません。