相続税を計算する際の土地の評価は「路線価 × 面積」で計算します。
道に面した真四角のきれいな平坦地ならこれで計算は終わりですが、実際には土地の状況は千差万別であるため、状況に応じた補正を行います。
評価の基本的なルールである財産評価基本通達には次のような項目が定められています。
・15 奥行価格補正
・16 側方路線影響加算
・17 二方路線影響加算
・20 不整形地
・20-2 地積規模の大きな宅地
・20-3 無道路地
・20-4 間口が狭小な宅地等
・20-5 がけ地等
さらにこれ以外の状況を考慮するため、国税庁のタックスアンサーにおいて「著しく利用価値が低下している宅地」として次のような例が列挙されています。
① 道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
② 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
③ 震動の甚だしい宅地
④ ①から③までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの
これらに該当すると10%控除できるとされているため、土地を評価する際は現地に行って状況を確認します。
ただあくまで例示であるため、どの程度であれば”著しく利用価値が低下”しているかには解釈の幅があり、納税者と税務署との間で争いになることがあります。
令和4年9月20日付けの国税不服審判所の裁決事例によると、納税者は一度申告したあと、更正の請求をして10%減額を追加しましたが結果としては否認されています。
・墓地▲10%+騒音▲10%⇒墓地のみOK
・墓地▲10%+震動又は軟弱地盤▲10%又は▲20%⇒どちらも不可
過去の裁決事例においては次の3要件で判断するとされています。
・路線価に減価要因が考慮されていない。
・減価要因が生じている。
・減価要因により取引金額が影響を受けている
今回は実際の取引事例が影響を受けていないことや墓地から距離が離れていることを理由に却下されています。
似た状況の取引事例があるとは限らないため、判定が難しい面がありますが、更正の請求をしたことで詳細に調べられる羽目になったことや、10%だけでなく20%減額していることもあって厳しい結果になっているとも言えます。
10%減額する場合は当初申告でするのは当然として、どの程度影響があるのか慎重に判断するようにしましょう。