庭と相続税

posted by 2023.10.11

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 自宅の建物を相続した場合には固定資産税評価額が相続税の評価額となります。
この評価額には電気設備や給排水設備などの建物附属設備も含みますが、庭は建物の固定資産税評価額に含まれていないため別評価します。

 

 庭園設備の相続税評価については財産評価基本通達92(3)に定められています。

「庭園設備(庭木、庭石、あずまや、庭池等をいう。)の価額は、その庭園設備の調達価額(課税時期においてその財産をその財産の現況により取得する場合の価額をいう。)の100分の70に相当する価額によって評価する」

 平たく言うと相続時点で同じような庭を一から作った場合にかかる金額で評価します。7掛けしているのは個別性を考慮して3割余裕を見ているためです。
この評価を行うのはどちらかと言うと文化的・歴史的価値のある日本庭園だけで、一般の家庭の庭にはそんな価値はないので関係ない、と考えられてきました。

 

 ところが令和5年3月7日付けの国税不服審判所の裁決事例では一般家庭の庭も通達により評価すべきという判断がされました。

<相続人の主張>

・庭園設備として一括売却できないので交換価値がなく、評価は0円
・売るとしても立木、庭石、灯篭等を個別に売却することになり、買取価額は低額
・庭園設備は自宅敷地内にあり、入場料を取れるようなものではなく、宣伝や集客の効果もなく使用価値がない

<国税不服審判所の判断>

・造園された状態なので店舗に並んだ庭石にように個別には評価せず、一体で評価する。
・3つの造園業者に工事費の見積もりを取って最も低いものを採用
・相続以前に自宅の収用を受け、庭園設備についても補償金を受け取っている

 

 今回の事例で一般の事例と違う点があるとすれば、収用の補償金を受け取って、費用を掛けて庭を移転している点です。
その時点で庭の価値が数字で明らかになっていることから0円ではない、という判断につながったことも考えられます。
また実際にかなり立派な庭だったのも知れません。

 

 通常の事例では庭を別評価することは少ないとは思いますが、相続直前に多額の費用を掛けて作った場合には、今回と同様に金銭的価値を見積もりやすいのである程度は評価した方が良さそうです。