事業承継税制と廃業 ②

posted by 2023.10.5

kisyakaiken_shinken

 前回の続きで事業承継税制と廃業の関係について見ていきます。

 

 まず廃業以前に事業承継税制を継続できるかという問題があります。
事業承継税制は、後継者が引き続き経営することを条件に納税を猶予する制度で、特に申告期限後5年間は条件が厳しくなっています。 

 今回の事務所の場合、2019年7月に相続があったので2025年5月までがその5年間に該当します。

 条件で引っ掛かりそうなのが次の2点。

・社長交代 
・補償に特化した会社にする(≒売上が0になる)

 これらに該当すると猶予されている相続税を利息と共に一気に支払う必要があります。

 

 今回の例はちょっと特殊ですが、事業承継税制の適用を受けている一般の会社でも何らかの事情で会社を売却したり、廃業(解散)することもあり得ます。
その場合、納税猶予はどうなるのでしょうか。

 

 一般措置では酷な制度となっていたため、特例措置では見直しがされています(ただし5年経過後)。

<一般措置>

原則相続があった時点の株価に基づいた相続税を納付(株価が下がっていても減額なし)

特例民事再生や会社更生があった場合のみ相続税を再計算して減額

 

<特例措置>

原則相続があった時点の株価に基づいた相続税を納付(株価が下がっていても減額なし)

特例5年経過後で経営環境の変化があれば、解散、譲渡、合併の場合でも相続税を再計算

 

≪経営環境の変化≫(次のいずれか)

・過去3年のうち2年以上赤字
・過去3年のうち2年以上売上減少
・有利子負債が年商の半分以上
・同業の上場会社株価が下落 等

 

≪納付額の減額≫

解散…解散時の相続税評価額で相続税を再計算

譲渡又は合併…実際の売却額(相続税評価額の5割が下限)で相続税を再計算

※5割未満となった場合

 一旦5割まで免除され、2年後の時点で事業が継続されていて、雇用の半数以上が維持されていれば残りも免除されます。
つまり買い手の2年後の事業の状況に左右されることになります。

 

 特例措置では、猶予税額を納めなければならないとしても、経営環境の変化と支払能力に応じて減額できるような制度になっています。

 

 事業承継税制は効果の大きい制度ですが、要件を満たさなくなった場合の反動が大きく、ある意味経営を縛る部分もあります。
将来の予測は難しいですが、様々な可能性を考慮した上で適用するようにしましょう。